Interview,

“Sup” by Ryusei Etou from STYLY on Vimeo.

“目的のために生み出された機能美” を主軸に、世の中に溢れるオブジェクトの本質を抜き出そうとしたVR作品「Sup」。

本作の作者であるCGアーティストの衛藤氏は以前、WIREDと我々が共同で制作した「Odd Camp」という奇妙なキャンプ体験ができるVR作品の制作を手掛けていただいていた。

「Odd Camp」を公開した昨年、8月時点ではまだまだVRは、ゲームやビジネス活用という印象が強かった中、同作品を通じてアートという文脈でもVRは表現可能なのだという新境地を開拓してくれた。

そんな衛藤氏の最新作「Sup」は、あまた溢れるものは全て目的があり、だからこそ美しさを感じるという衛藤氏の考えを現実から切り取りながら作品にしている。

本インタビューでは、作品の核となるコンセプトメイクの部分や制作手順などについてお伺いしてきた。

プロフィール

衛藤隆世

1993年 東京生まれ。CGアーティストとして、原初的なCGの可能性を探る

2013年 多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術専攻 入学
合同展示「爆破m,o,d,e」
2014年 「爆破m,o,d,e Exibition -welcome house-」
2015年 「爆破m,o,d,e Exibition -vol.3-」
2016年 「道 -theory-」
2017年 「YourGayThoughts」のMV制作、「Qiezmabo」のMVの一部に携わる
「PsychicVRLab」の体験型VR空間・デモ空間制作等

手を動かし、自分のやりたい事を考える

— 始めてVRに携わったのはいつ頃ですか?

衛藤氏:ちょうど1年前ぐらいに声をかけていただいて、STYLYのデモ空間作成と同時進行でWIREDの「Odd Camp」という作品の制作を始めたのがキッカケですね。Unityは触ったことがあったので。

 

— NEWVIEWプロジェクトの話が来た時はどう思いましたか?

衛藤氏:率直に面白そうだなって思いました。話が来る以前に既にVR作っていたのも大きかったですね。

 

— 他のクリエイターに比べると、アドバンテージは大きいですよね。制作にはいつもどんなツールを使いますか?

衛藤氏:CGツールが多いですね。VRを作る時は主にCINEMA 4D(以降、C4D)を使っています。

C4Dで配置もアニメーションも決めてから、Unityにインポート後に確認→STYLYへアップロードという手順で行っています。

C4DからUnityに持っていった段階で対応できない動きなどがあったので、その点だけ確認・調整するようにしていたのですが、C4D上で半自動的にアニメーションを付与してくれる波の動きなどはUnityにあげた段階で機能せず、諦めました。

そう考えるといろいろ表現できない事を削ぎ落していったのでシンプルな着地になりました。

C4DからそのままSTYLYにアップロードできるようになると嬉しいですね。

 

— Unity以外からも簡単にアップロードできるようになると確かに楽ですね。どのぐらいの期間で制作されましたか?

衛藤氏:1ヵ月ほどで仕上げました。人によってはもっと短くできると思うのですが、僕の場合初めからモデリングとドローイングをやっているので、結構時間がかかってしまいました。

 

— 「Sup」はどのような手順で制作されたのでしょうか?

衛藤氏:既に作っていた3Dモデルが3つほど手元にあり、それで頭がいっぱいだったので使いました(笑)

僕はいつもコンセプトを固めるより先に手を動かしてある程度、作ってから「僕は何をやっているのだろう?」と考えながら、自分の表現したいことを見出すタイプです。

自分の表現したい欲求をなるべく分解し、その理由、対象についてマインドマップにまとめて、コンセプトはあとから抜き出していくことが多いです。

コンセプトが先の場合もあるので一概には言えませんが、なんとなくこのやり方の方が面白いものができあがりやすい気がしています。

 

目的に向かい機能化されるから備わる美しさ

— 本作はどんなイメージで制作されたのでしょうか?

衛藤氏:今回、僕は何がしたいのだろう?と考えた時、ものが向かっていく目的と、そこに向かっていく機能との相関関係があると思うのですが、そこら辺を感じさせる、という事をやりたいんだと思いました。

ソーシャルゲームの広告などは多くの注目を集めることを第一目的としてアップデートされていったある種の視覚表現だと思うのですが、個人的にはソシャゲ広告のような目的に沿った表現は、美少女などが美しいという小さい美とは別に、ストイックに機能する表現の在り方としてさらにでかい機能美があるような気がします。

目に見える部分よりも、さらに大きなスケールでは理にかなっているという目的を抜き出していくという点が、僕のやりたい事だったので、今回の作品でもソーシャルゲーム広告のオブジェクトを配置しています。

 

— 他のオブジェクトも実在するものですか?

衛藤氏:全部、元写真があってそれをベースに3Dモデルやグラフィックなどを作っています。

インターネットから拾ってくるものもあれば、実際に自分が足を運んだ場所の写真から切り取って制作物を起こしたりもしています。

ウォルマートのカゴとかは、まさに旅行で行ったハワイで取った写真から作りました。

他にもミスコロンビアや小倉○子、インスタに乗っていたターザンをしながらはしゃぐ外人など、個々のモチーフが持っている目的の方向や大きさは、バラバラとも言えますし、捉え方によっては同じとも言える。

それら一つ一つを紐解いていくと、いわゆる裏側的なものを感じました。

例えば、作品の中にハワイで撮ったゴミを使っているんですが、旅行に行った際、少し治安が悪い場所に足を運んでみると、観光客との共存を目的にしていく時、取捨選択した街のネガが見えて来て、目的を考えると時に機能美の一環として取捨選択も必要なんだと思いました。ネガさえも含めたかっこよさ、と言えばいいのでしょうか、うまく言えません(笑)。

 

美しさの理由を辿る

衛藤氏:なぜ目的を抜き出す、という事をやっているかと言うと、クリエイターとして素敵な世界観を生み出すというのも、もちろん良いのですが、景色の中で既に生まれてしまっている美しさ、必然的に存在せざるを得なかった美しさみたいなものを抽出していくと、何か大きなものが掴めるのではないかと思ったので、作ったというのも理由としてあります。

作品の世界観を作る上で、僕は内向的、外向的なアプローチがあると考えています。

個人的には外側に開けていた方がいいかなと思っていて。外側に実際にある美しさが目的に向かっていくから、機能化されてさらに磨きをかけたように美しくなる。逆に言えば目的がなければ機能美は生まれない。そう考えると、世の中の美しいものには必ず目的があります。

その美しさはたくさんあって、存在しなければいけなかった理由を辿ると逆算的に本質が見えてくるだろうと思いました。

ソシャゲの広告一つ取ってみても、最近は性的な表現が多かったりするじゃないですか? それってニーズがあるって事ですよね。その表現が増えるという事は欲しているということ。「不適切!」「気持ち悪い!」と嫌悪するコメントを見ますが、倫理云々よりももっと深い部分、人間の抑圧された部分に欲求があるからこそ、それが好きなユーザのために表現はアップデートされていきます。 まさに目的に向かったデザインが常にアップデートされている状態ですね。

僕はそういう目的のために、必然的にアップデートされていく機能美というものを本作で表現できればと考え、制作しました。

 

ものには常に目的が存在し、だからこそ備わる機能美。その本質を個々のものから逆算的に見出そうとしたチャレンジングな作品「Sup」。ぜひ、一度作品を体験いただき、それぞれのものにどんな必然性があったのか、各々考えていただくとより作品を楽しめるだろう。

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Ryohei Watanabe

Ryohei Watanabe

VR Inside元創刊編集長。Psychic VR Labが提供するVRクリエイティブプラットフォーム「STYLY( https://styly.cc/ )」に惚れ込み、2018年1月よりChief Media Officerとして同社へ移籍。

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