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映像ディレクター/映像作家である大月 壮氏がVRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」を活用し、手掛けたVR空間「paralledice」。

「paralledice」は、平面映像では表現が難しい空間の広大さや狭さ、高低差を表現できるVRの特性に注目して制作された作品だ。

本作は階段からブロック、銃というように現実的なオブジェクトから非現実的なものへと変貌していく足場を登りながら、頂上にあるゴールを目指していくゲーム要素が含まれたコンテンツとなっている。

ゲームクリエイターの側面もある同氏だけあって、登れる場所のあたり判定の厳しさやルートの分岐など、要所要所にこだわりを感じる。

世界観も大月節を感じさせる、いい意味でアホな空間は見る人を魅了する。

本インタビューでは、STYLYで制作された「paralledice」の制作過程から、こだわりのポイントなどについて、ご本人にお話を伺ってきた。

PROFILE

Sou Ootsuki

Sou Ootsuki

1977年神奈川県生まれ。東洋美術学校卒業。映像作家、映像ディレクター。

3DCGから創作キャリアをスタート。グラフィック・映像などビジュアル文化と文脈を共にしながら、進化し続ける映像機器やソフトウェアと戯れ続け、モーショングラフィックス・アニメーション・実写映像・ゲーム・VR映像など様々な制作方法を身につける。商業的にはMV、ライブスクリーン映像、ファッション用、企業用のプロモーション映像などを手掛けながら、今も尚、ユーモアと実験精神を持ちつつ、たまにハイクオリティな戯れ創作活動を存続中。

オリジナル作ではニコニコ動画で話題となり、文化庁メディア芸術際入選まで果たした「アホな走り集」が有名。

 

水平空間というイメージを裏切りたい

— STYLYを使ってVR空間を制作する際、まずは何から始めましたか?

大月氏:始めて触ったソフトだったので、まずは何ができるかを一通り、確認する所から始めました。

STYLYの特徴の一つとして、様々なデータをインポートできるという点があったので、「Google Blocks」で作った3Dモデルを取り込んだ所、中心点と3Dモデルの位置がズレたりと最初はエラー、トラップとのお付き合いから始まりました。

様々なデータを取り込める反面、全てがベストの状態で表示される訳ではないので、かなりいびつなものを作り上げることになるだろう、と思い至るまで2週間程度かかりました。

恐らく頭の中でハイクオリティーな作品を思い描いても、現段階でイメージ通りに組立てるのがすごい困難だろうと予想できたので、余りクオリティー重視ではない仕上がりを出口にするのがいいだろうと思い、作品制作を開始しました。

 

— 「paralledice」のコンセプトは、どのような過程で生まれてきたのでしょうか?

大月氏:STYLYはWebEditorを開くと、水平に空間が広がっている印象があるじゃないですか?

まず、水平にどこまでに行けるのだろうなというイメージを裏切りたいと思い、垂直の広がりで空間を制作したいなと思ったのがまず、一つ目のアイディアチェンジの瞬間でした。

最初はロッククライミングをするよう作品を作りたかったのですが、いろいろ調査した結果、結構な壁があると感じ、そのタイミングでは実装することは、断念しました。

その後、TURBOSQUIDから階段のデータを取り込んだら、ちゃんと階段を一段一段登れることに気付きました。

 

— 作りたいものと作れるものが合致した瞬間だったということですか?

大月氏:そうですね。元々、上に登るというアイディアがあったので。きちんと登れると分かった時に何かパーッと見えたと言いますか、階段だけでなく様々なオブジェクトもコントローラーを使えば登れると分かったので、そこからは早かったですね。

 

ゲーム的思考と報酬設計

— そこから、完成まではどのぐらいの制作時間だったのでしょうか?

大月氏:原型は大体、一晩です。細かい所は抜きにして、大体3層に分かれていて、頂上に行ったらライブがやっているという所までですね。

ゲーム的に考えれば始まりから終わりのタイミングで、何かしらのカタルシスが必要じゃないですか?達成感だったり。それが今回だと頂上にあるライブを想定しています。ただ、あのライブが報酬として正しいのかは謎ですが(笑

その後、アイディアと骨組みを一晩で作ったあと、頂上のライブどうしようかと考え始めた時、バンというラッパーの友達の事を偶然、思い出しました。

その頃、ラッパー忘年会というのがありまして、その場に来ていたラッパーの友人達とバンって面白いよねという話になり、バンを空間に出してみようと、閃きました。

すぐに連絡し、1曲提供してくれないかと話した所、送ってくれたのが頂上のライブで流れている曲でした。

あの曲はタイの事を歌っているんですよね。最後にパラダイスとか言っていて。

 

— それは作品名にもつながってくるのでしょうか?

大月氏:そうですね。作品名は「paralledice(パラレダイス)」というのですが、パラレルワールドとパラダイスを掛け合わせて名付けました。

バンの頭の中にあるパラレルワールドのパラダイスみたいなテーマを思いついて、彼の好きなものを箇条書きで送って貰いました。

そしたら、ラーメン二郎、女、金などいっぱい上がって来たので、とにかく彼の好きなものを至る所に配置しました。

 

— ラーメン二郎などのオブジェクトがご自身で作られたのですか?

大月氏:あればBlocksで作りました。実はラーメン二郎の中には隠し部屋があるんですよ。

中に寝ているバンが入っているんですが、なかなか気づいて貰えないですね。

 

ファミコン世代に刺さる隠し要素

— 私自身、全く気付いていませんでした!

大月氏:気付かないですよね。この辺がファミコン世代の所以ですかね。ファミマガの裏技世代ですので。

私は現在も、グリッジとかバグがずっと好きなのですが、そういうファミコンの中にあった隠し要素みたいな文脈は、二郎などはまさにそうですね。

 

— 正規ルートではない部屋などが用意されているのも、ファミコン世代の遊び心なんですね。

大月氏:そうですね。ただ、ちゃんと救済措置として別ルートからでも、ゴールに辿り着けるような設計にはなっています。

ただ、どうしても当たり判定が厳しい箇所があり、詰まってしまうユーザは多かったですね。

例えば、エジプトのスフィンクスなどが置いてあるエリア。地面がボコボコしている箇所があったと思いますが、あれは実際の町をパシャパシャ撮影した写真素材をフォトスキャンというソフトで3Dモデル化しているのですが、低ポリゴン化する際、コリジョンが破壊されて変な障害が発生している可能性があります。

それでも、今回はクオリティーを求めないと決めていたので、これは持ち込めるか?あれは持ち込めるか?というコラージュの面白さを感じながら自分は作っていました。ノリでガンガン挿入できるので、久しぶりにこういう作り方したなと感じ、すごく楽しかったです。

 

— その割り切りが逆に良かったのですね。

大月氏:そうですね。普段の仕事は、必ず目標のクオリティーが設定されているじゃないですか。

それってある意味で作業だと思うんですが、今回はSTYLYに配置できるオブジェクトが100%になるまでぶち込むという目標にしたんですよ。

物理的限界を目標にして、ひたすら好きなものを入れ続けられたのは、すごい面白かったです。

ただ、作り終わった後に正直、機能的に使いにくい点もあり、そのせいで断念していることもあったので、今後のアップデートで改善してくれると嬉しいですね。

例えば、オブジェクトの移動を数値指定できると思い通りに配置ができるようになりますし、中心点を変更できるとオブジェクトが中心点の周りを回転するような動きもできる。

※数値指定は前回のアップデートで、実装されました。

我々はAdobe PhotoshopやAfterEffectsなどをよく使いますが、共通する概念機能があると思っています。例えば、レイヤーの中にフォルダを作れたり、オブジェクトのロック機能など、既に当たり前のようにクリエイターが使っている機能が実装されるとさらに触り心地が変わると思います。

あと、Unityなどのゲームエンジンを使わないでも、オブジェクトに動きが付けられると、さらに表現の幅が広がるので、クリエイター達には刺さると思いますね。

 

クオリティーは縦軸ではなく、横軸で考える

— ありがとうございます。続いて、制作過程でエラー以外でつまずいた点などはありますか?

大月氏:難易度調整ですね。

最初、私が配置したとある一つのオブジェクトは、絶対に誰しも気付くと思っていて、そこの位置をベースにしながら登れる場所を最小限に設定していました。

でも、実際に友人に体験して貰うと、予想以上にみんなオブジェクトの位置に気づきませんでした。

これは大きな気づきで、そこからは方針を変えて登れるオブジェクトを増やし、登りやすくしました。

あと、先ほども話に出ましたが、いくつか正規ルート以外でも登れるよう、救済措置的に別ルートでも登れるようにしました。

 

— 最後に大月さんが話していた「クオリティー」に関して、ご自身の考え方を教えてください。

大月氏:私独自の考え方ですが、昔からクオリティーは縦軸ではなく、横軸で考えています。

ハイクオリティーからロークオリティがあり、上が偉くて下がダメという先入観が今だに残っていると思っています。

でも、私にとってクオリティーは横軸で、ハイクオリティーのものを作りたい時は、クオリティーを重視するだけで、グシャグシャな世界観を作りたい時は、ロークオリティーを選ぶというか、それもすごいカッコいいじゃん!と考えます。

そもそもバグが大好きだから、いくら崩れていようが、そのニュアンスが格好良かったり、面白かったりすればいい訳ですよね。

音楽でもそうじゃないですか?ちゃんと旋律があるものから、ノイズがあったりなど。

そういう意味で私のクオリティーの概念が横軸だからこそ、今回の作品に着地できた所があるのかなとも思います。

大月氏はSTYLYを提供する我々、Psychic VR LabとPARCO、LoftWorkの3社共同の3次元空間の新たな表現と体験をデザインする実験的プロジェクト「NEWVIEW」の初期メンバーとして、本作の制作に取り組んでいただいた。

プロジェクトの目的通りの新たな体験を空間に体現してくれた本作。

今後も大月節全開で、新たなVR表現を開拓して貰えると嬉しい。

About Styly

STYLY is a cloud-based service for creating high quality, beautiful VR spaces that doesn’t require any coding.

By using STYLY, creators can express their imaginations indefinitely and build a variety of virtual spaces.

Through these spaces, we can share experiences that are unachievable in the real world.

STYLY Official Site:https://styly.cc

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Ryohei Watanabe

Ryohei Watanabe

VR Inside元創刊編集長。Psychic VR Labが提供するVRクリエイティブプラットフォーム「STYLY( https://styly.cc/ )」に惚れ込み、2018年1月よりChief Media Officerとして同社へ移籍。