※本記事は昆虫の写真などのやや刺激的な内容を含みます。苦手な方は閲覧にご注意ください。
体験レポとは
本シリーズは我々STYLY取材班が様々な超常的かつ非日常的な体験をしに行き、多岐にわたる文化やサブカルチャーをお届けする体験型レポートシリーズである。
今回我々が向かったのは「米とサーカス」である。
ジビエが食べられる「米とサーカス」
「獣肉酒家 米とサーカス」は高田馬場駅から徒歩2分のところにあるジビエ料理店である。高田馬場駅早稲田口を出ですぐの高架下にある薄暗い路地を進むと一際目を引く様相を呈したお店が目に入る。薄暗く狭い路地の先に突如現れる奇々怪々とした外観はまるで異界の入口のように感じられた。
外観こそ不思議で耽美な雰囲気であるが、お店で提供されているジビエは国が定めている「野生鳥獣肉の衛生管理ガイドライン」に沿っており、国から許可を受けた食肉処理業で解体されているので安心だ。さらに十分に加熱調理がされているので食中毒のリスクはなく、安全に楽しむことができる。
海外から輸入している食材(カンガルー、ラクダ、ワニ、ダチョウなど)についても輸入先であるオーストラリアの厳しい基準をクリアした安心・安全な食材だけ提供している。
詳しくはHPにて明記されている。
いざ入店
昆虫食の自販機や「獣出没注意」の看板を横目にいざ入店。
店内に入るとトタンの壁やはっきりとした色の壁紙で装飾された内装が目につく。電飾やレトロな雰囲気のポスターが「サーカス」感を醸し出しており、店内に入って最初に丸尾末広作品のような雰囲気を感じた。「少女椿」に見られる耽美な雰囲気がかなり感じられる。
今回は一階のカウンター席で食事を楽しんだが、二階席はサーカスのテント風の天井に電飾がつられており、よりサーカス感を感じられる内装になっている。
カウンター席にはハブやイモリが漬け込まれたお酒の瓶が置いてあり迫力満点だ。
席につくとお通しが運ばれてきた。
普通の居酒屋ならお通しはきんぴらごぼうや切り干し大根だが……。
運ばれてきたのはなんと「雀の丸焼き」だった……。
さっそく洗礼を受けた我々は恐る恐る食べてみることにした。味はレバーのようで、骨も全て食べることができた。頭蓋骨も柔らかく全身を完食。食感は口の中で骨がパキパキと折れる感覚がなんとも言えない感じであった。
飲み物を注文することにした私は「糞茶」を注文した。糞茶とはお茶の葉を食べて育った蚕の糞を乾燥させた中国茶で、名前のインパクトで即決してしまった。
特に癖はなく、マテ茶のような香りと味がした。名前は衝撃的だがとても飲みやすかった。
そのままお酒を追加注文することに。米とサーカスの自家製薬膳酒は種類が豊富で目を引く名前のものが多いので私は好奇心に勝てず、一番やばそうな「ゴキブリ酒」を注文。
「すいません……足がはいっちゃったんですけど……」
と申し訳なさそうに運ばれたゴキブリ酒にはゴキブリの足が入っていたがこちらとしてはラッキーなのでニコニコで受け取る(ゴキブリ酒には食用のアルゼンチンゴキブリが使用されているので問題は無い)。
ゴキブリ酒は名前のインパクトこそ強いが、口当たりは滑らかでお酒が苦手な私でも飲みやすかった。
ここから本題の食事である。興味深かかったものを一部紹介する。
まずは兎の唐揚げ。味は鶏肉のようだが、かなり柔らかく甘味がありおいしかった。
お次にワニ舌の自家製スモーク。食感は薄くスライスしたちくわのようで、たっぷり乗った脂とスモーク加減が絶妙でおいしい。今回食べた食材の中で一番のお気に入りだ。
昆虫食
次に注文したのは6種の昆虫食べ比べセット。こちらは季節によって面子が変わるが今回はカイコ、ハチノコ、ミルワーム、タガメ、コオロギ、イナゴの6種類だった。こちらも見た目のインパクトは抜群。
- カイコ 身が詰まっていてとても苦い。大人の味。苦手な人は苦手かも…
- ハチノコ とても甘い蜂蜜の味。スイーツ感覚でどんどん食べれてる。
- ミルワーム 味を言い表せる語彙が見つからない。しいて言うならおばあちゃん家の畳の味。変わった風味が鼻腔を通り抜け、後味が強烈に残る。
- コオロギ サクサクとした食感で、スナック菓子のよう。味は苦め。
- イナゴ 佃煮になっていて、食べた経験のある人も多いだろう。味が濃いめなので白米と一緒に食べたい。
ここで6種の昆虫食べ比べセットでメインのタガメを食べていくことにした。
タガメは食べ方が少し特殊で、備え付けのハサミで身を分解して内臓のみを食べる。
小冊子がついてくるので分解方法はそれを参考に進めていく。
まずは羽を広げ本体部分を露出させる。透き通った羽が美しい。
次に本体のお尻部分をハサミで切断し、その断面から本体中心に向かってハサミを入れ展開する。これで準備完了。
「タガメは匂いが少し独特です」と言われたので「くさいのかな……?」と予想したが、この予想はいい意味で裏切られた。
分解している最中に気づいたのだが、まるで青りんごのようなフルーティーな香りが漂ってきた。
これは意外。分解を終え、内臓を掻き出し一口食べてみると……、
青りんごや……まんま青りんごや……
めちゃくちゃ青りんごの味がした。少し酸味のある青りんご。
タガメが食べているものによって味が変化するのかと思いスタッフの方に聞いてみると、食べたものは関係なく、タガメのオス固有のフェロモンの匂いと味らしい。なんとも不思議なものである。
タガメの感動を嚙み締めたところで、次はジビエ焼肉をいただくことにした。
ジビエ焼肉
今回、好奇心の赴くままに注文したのはラクダ、アライグマ、トド、マンボウの腸の4種類。
まずはラクダから実食。ラクダは身がしっかりとしていてレバーのような味がした。苦みが少し強いビターな味わい。
次にマンボーの腸をいただく。
かなりコリコリとした食感で、ホルモンに似ている。塩とレモンをつけて食べるとうまみがしっかりと感じられておいしい。
今回注文した中で一番珍しいのはアライグマらしい。あのかわいらしいアライグマを食すのは気が引けるが、加工されテーブルの前に運ばれてきたら肉は肉である。遠慮なくいただく。
焼く前の匂いは表現し難いが、あえて言葉を選ばずにいうと部活後のユニフォームから漂う汗のような匂いで、すこし顔を歪めてしまった。
食べた瞬間は、まず肉の柔らかさに驚いた。弾力のある身はなかなか噛み応えがある。最初は食べやすいなと感じたが、後から表現しがたい苦みのようなものが追撃してきた。これは好みがかなり別れるだろう。個人的には食べられる味なのだが、食べられるがゆえに後味で感じる苦みが苦手であった。興味深い味であることには変わりないので皆様にも一度試していただきたい。
最後に食したのはトドだ。スタッフの方に「一番えぐいやつどれですか?」と聞いたところトドをおすすめされたので注文してみた。
かなりレバーに近い味だが、なぜか脳がトド肉のことを拒否しており、飲み込むのにかなり時間がかかった。魚介系の味が口の中に広がり、鉄っぽさと生臭さが少し苦手だった。苦虫を嚙み潰したような顔をしているとスタッフの方が「魚の肉を食べていると思い込みながら食べると意外とイケます」とアドバイスをくれた。その通りに頭の中で魚を思いながら食べてみると不思議とするっと食べることができた。人間の脳って不思議……。
一通りジビエを楽しんだところで、最後に大物のオオヤモリの姿揚げを注文。
見た目がかなりキュートで、「おいしそう」よりも「かわいらしい」という感想が先行してでできた。
この背中が反った姿勢に揚げるのは高度な技術を要するらしい。美しい。
かわいらしいオオトカゲちゃんの足を一口パクリ。カリカリサクサクの食感に、味は鶏肉っぽくもあり白身魚っぽくもあり柔らかく、かなりおいしい。小骨が多いのでちょこちょこ避けながらいただくのがおすすめ。
まとめ
ドリンク、おつまみ、揚げ物、昆虫、焼肉と未知の食材を味わい大満足であった。個人的なお気に入りはワニ舌の自家製スモークだった。
お店のスタッフの方々の雰囲気も明るく、食材についての質問にも快く答えてくれた。希少な食材を使用しているにも関わらず、お値段もお手頃。
食材の種類も豊富で、一通りジビエや昆虫を体験してみたいのならおすすめである。
お店に入る勇気が出ない方はお店の前に設置してある昆虫食自動販売機で一度試してみるのも良いかもしれない。
新たな食の体験、未知の感覚を味わいたい方にはぜひとも訪れてほしい。
体験場所詳細
「米とサーカス」Information
・HP
※提供されるメニューや食材の詳細はHPに記載されています。
Edited by SASAnishiki