注目のハードウェアが集結! Laval Exhibition 2023

 

フランスで毎年行われる、VR/AR/XRをテーマとした大規模フェスティバル「Laval Virtual」。今回、4月12日~16日にかけて開催されたLaval Virtual2023 を体験したので、複数回にわたってレポートします。今回はレポートの第二弾として、Laval Virtualで行われるExhibitionの中で、特に注目度の高かった展示について取り上げています。

2023年のXRトレンドが集まる

Exhibition 2023では、200近い企業や研究機関がブースを出しており、VR/ARテクノロジーを使う方法や、魅力的なXRコンテンツを試す方法を体験できました。
また、先進的なプロジェクトを発見し、様々な分野の人たちと出会い、VR/ARの専門知識が集まるLavalでネットワークを広げる良い機会となるでしょう。それぞれのブースに用意されているデモンストレーションでは、実際にデバイスを使用しながら先進的なプロジェクトを体験することができます。

PICO

多くの人だかりで賑わっており、注目を集めていたのはPICOのブース。最新のヘッドセットのシリーズが並ぶブースでPICO 4 Enterpreisを体験してみると、その軽さに驚きました。他のヘッドセットとは段違いに軽く、長時間の使用でも快適に装着できます。締め付けるような感覚も少なく、クッションでやさしく包み込まれるようでした。法人向けなので一般では使う機会は少ないと思いますが、とても良いデバイスだと感心してしましました。

PICO 4 Enterpreis

PICOは、中国に本社を置くVRヘッドセットメーカーです。同社は2016年に設立され、主に消費者向けにVRヘッドセットを製造・販売しています。これらのヘッドセットは、高性能なスペック、軽量化、コンパクトなデザイン、手頃な価格などの特徴を持っています。また、同社はビジネス向けにも製品を提供しており、イベントや展示会などでの利用を想定した「PICO Enterprise」シリーズも展開しています。最近では、教育分野でも利用されるようになってきています。

PICO G3

ビジネス向け3DoFオールインワンVRヘッドセットPICO G3は、Laval Virtual 1日目にリリースが発表され、予約が開始されました。ハードウェアのスペックに加え、手軽に使える点が魅力の一つです。作業のトレーニングなど産業分野での教育などに最適で、値段は399ユーロとお手頃な価格です。

Olfy

ガヤガヤと賑わう会場の中の一角で、しっとりと落ち着いたブースを見つけました。周囲の喧騒とは一線を画したそのブースに近づいてみると、とても爽やかな香りが漂います。このブースで展示をしているOlfyは、VRと香水を組み合わせた製品を開発しているフランスの会社です。

ヘッドセットをかぶると、フランスのとある地方で営まれている製材所のプロモーションを見ることができました。森林から刈り取られた木が、丸太になり、製材機に吸い込まれる瞬間、木の香りが鼻をかすめます。ヘッドセットに取り付けられたデバイスから放たれたのは木のパフューム。映像と連動して、最適なタイミングで鑑賞者の嗅覚を刺激します。まるで、本当に木のそばにいるような没入感を味わうことができました。

この製品は、VRヘッドセットに装着する香水ディフューザーデバイスで、VR体験中に香水の香りを嗅ぐことができます。例えば、VR上で森林の中にいる場面では、松やユーカリなどの森林の香りを、VR上で花畑にいる場面では、花の香りを嗅ぐことができます。

ここで使用されているパフュームは、フランスのプロヴァンス地方、香水の町として有名なグラースで作られているそうです。中世から香水製造が盛んな場所として知られているこの町では、多くの香水メーカーが18世紀から続く伝統的な香水製法を守り続けています。このような伝統がVRと結びつくことで、新しい形の文化の体験を可能にするのです。

HaptX

こちらは3日間ずっと人が並んでおり、大人気だったグローブ型のハプティクスデバイス。ときどき順番を抜かされながら、3日目にてやっと体験することができました。

グローブ型のハプティクスデバイスを装着すると、VR空間でおもちゃのようなオブジェクトの感覚を体験することができます。例えば、画面に映る月や星を握ることができ、そのオブジェクトを掴む感覚を体験できます。雲をクシュクシュと握りこすると、雲はたちまち黒色に変化し、雨を降らせ始めます。雨が手の上に落ちる感覚も忠実に再現されており、臨場感あふれる体験ができます。また、ハエ叩きも棒の部分と棒の先の部分では全く異なる感触で、湾曲するプラスチックとその摩擦の感じや金属のツルツルした感じなど、それぞれの素材の感覚が忠実に再現されており、驚くばかりでした。小さな家からは小さなキツネや蜘蛛が出てきて、手のひらではいずり回ります。生物が手の上を動くような体験は、現実世界では味わえない貴重なものでした。

HaptXは、アメリカに本社を置くVRハプティクス技術に特化した企業です。同社は、VRの没入感を高めるために、手袋型のハプティックスデバイスを開発しています。このデバイスは人間の手の自然な動きを追跡し、触覚フィードバックにより、ユーザーが物体を掴んだり、感触を感じたりできるようになっています。デモンストレーションで体験することのできた商品は、あまりに人気があったため、残念ながら現在は在庫がなくなり販売を終了しているそうです。

このようなハプティクス技術を利用したグローブ型デバイスが普及すれば、リモートワークやビデオ会議での握手や(欧米文化の)ハグ、さらには物を手渡すなどの動作を再現できるようになるかもしれません。また教育や訓練分野では、外科手術や自動車整備の訓練において、ハプティクス技術を使って手先の感覚を再現し、より実践的な訓練を実現できるでしょう。この技術は様々な分野での利用が期待されており、よりリアルな体験が可能になると考えられています。

ilumetry

こちらのブースでは、ホログラフィックディスプレイを体験することができました。写真のように、肉眼で見ると像が重なって見えるだけの映像に見えますが、専用のメガネをかけると瞬く間に3Dホログラムが浮かび上がります。目の前に現れる超立体的な3Dオブジェクトは、どの角度から見ても奥行きを感じることができ、まるで本当にそこにあるかのような錯覚を起こします。ここで専用のスティックコントローラーを使うと、3Dオブジェクトを動かすことができるので、建物の構造や、車などの部品の仕組み、または身体の内臓の構造などを分解して観察したり、組み立て直して構造を理解するようなトレーニングに最適なハードウェアとなっています。

実際に体験すると、他のホロレンズやヘッドセットに比べ格段に操作が軽く、また現実世界もメガネ越しに自分の目で見ることができるため、近い未来には学校や訓練の場でどんどん普及していくのではないかと感じました。同じメガネをかけていれば、同じように画面が立体的に見えるので、教える側と教えられる側のコミュニケーションがスムーズに行えることも魅力の一つです。

アメリカに本社を置くIllumetryは、ホログラフィックディスプレイを提供する企業で、光学技術やソフトウェアの知識を活かし、革新的なホログラフィックディスプレイの開発に取り組んでいます。また、軽くてワイヤレスのIllumetryメガネはサングラスのように外の世界を見ることができるため、現実世界から締め出されることなくホログラムを見ることができます。手元のジョイスティックはホログラム上のオブジェクトを操作するためのもので、実際のオブジェクトのようにあらゆる面からホログラムを調べることができます。

Microsoft + Insight

こちらの体験ではMicrosoftのHoloLens 2を利用したメタバース上のリモートワークを体験しました。
体験が始まると、目の前にホログラムの同僚が現れます。どんなに離れた場所にいても、メタバースで集合し、会議をすることができたり、メタバース上で患者を診断することができるこのシステムは、Microsoftと共同で開発されたそうです。また、見た目もより本人に近づけるために、実際の顔をキャプチャしたアバターを使用しています。アバターの動きは本人の手の動きや頭の動きに連動しており、より臨場感あふれるコミュニケーションをとることができます。近い将来には、顔の表情を読み取る機能を実装し、表情もインタラクティブに再現できるように研究しているそうです。

HoloLens 2は前モデルであるHoloLensと比べて、視野角が2倍以上、解像度が2倍以上、操作性が向上し、より快適に着用できるようになっています。また、ユーザーの目線を認識する機能が強化され、ホログラフィックなオブジェクトをより自然に操作することができます。さらに、HoloLens 2は、Azureのクラウドコンピューティングを利用し、AIや機械学習による高度な処理が可能です。HoloLens 2は、工場や倉庫などの業務現場、教育、医療など、幅広い分野での活用が期待されています。

今回のExhibitionでは、Microsoftと共同開発を行う10の企業が「Village Microsoft」という枠組みでブースを出し、産業分野やソフトウェア開発など様々な方向からの取り組みを展示していました。

Meta 

こちらの体験では、Meta Quest Proで新たに実装されたMR機能を体験することができました。ヘッドセットを装着すると、ヘッドセットに取り付けられたカメラを通して現実の世界を見ることができ、その映像の上に3Dオブジェクトやアニメーションを見たり操作することができます。それにより、現実世界にバーチャル世界が混ざったような景色を体験できます。HoloLens 2 が半透明のホログラム像であるのに対し、Meta Quest Pro2ははっきりとした3Dの像が見えることが特徴です。

Meta Quest Proは、メタとQualcomm Technologies, Inc.とのコラボレーションによって開発された、スタンドアロン型のVRヘッドセットです。Quest 2に似たデザインで、スマートフォンやPCに接続する必要がなくWi-Fiに接続するだけで自由にVR体験を楽しむことができます。

また、現在Meta社はもっと軽量なARグラスを開発しているとのことで、今回は現物を見ることはできませんでしたが、これからのMeta社の技術進歩に注目が集まります。

多くの人が集まるフェスティバル

Exhibitionの初日には約6000人の来場者があり、とても多くの人たちで賑わっていました。どこのブースも大盛況で、待ち時間が長く体験を諦めたブースもありました。それだけ注目度の高いフェスティバルなので、事前にブースを回る順番などを計画した方がより効率的に多くのプロジェクトを体験することができるでしょう。

次の記事はLaval Virtualのカンファレンスを紹介します。お楽しみに!

Edited by SASAnishiki