バーチャル空間の有限性を体験する「C’est la vie, SHOGYO-MUJO」とは

2020年08月24日

昨年開催されたNEWVIEW2019。テーマ「DESIGN YOUR ULTRA EXPERIENCE “超体験のデザイン”」のもと、様々な体験性のあるVRシーンが国内外から集まった。

今回はその中で見事KMNZ PRIZEを受賞した「C’est la vie, SHOGYO-MUJO」の作者であるSAKI TAKEGAWA氏に制作秘話、これからの展望についてお伺いしてきた。

1 プロフィール
2 VR空間の「終わりが見えない」ことに関しての疑問
3 ストーリーを感じるシーンをつくる
4 これから

プロフィール

名前：SAKI TAKEGAWA（https://www.sktkgw.com/）

3DCGデザイナー｜日本

—NEWVIEW AWARD 2019 KMNZ PRIZE受賞おめでとうございます！はじめに、本作「C’est la vie, SHOGYO-MUJO」に込められた制作意図を教えていただけますか？

武川氏：終わりのあるちょっと儚いVR作品が作りたいと思い、C’est la vie, SHOGYO-MUJOを制作しました。

フランス語のC’est la vie「これが人生さ」と、仏教用語の諸行無常という言葉をテーマに、現実世界（VR上ですが）とゲームの世界を行き来することができます。

ゲームの世界では色々な意味合いを持つオブジェクトや言葉を錫杖（修行僧が持つ杖）で破壊して遊べます。

何故このようなテーマにしたのかというとバーチャルの世界に没入すると年を取らないし、災害で建造物（or ワールド）は壊れない、ずっと居心地良く過ごせそうで素晴らしいと思う反面、終わりが見えないな、このままでいいのかなと疑問に思うところがありました。

そこで、「この世のものは永遠に続かない」という意味の諸行無常とC’est la vieをタイトルに使い、作品を通してあらゆる変化や終焉を体験者に感じ取ってほしいという願いを込めました。

ストーリーを感じるシーンをつくる

— ストーリー性のあるシーンを構成する際、武川さんはどのような手順で制作をされていますか？アイデアの出し方についてもお伺いしたいです。

武川氏：変化のあるシーン制作を意識していたので、分かりやすく起承転結でシーンの流れを以下のように構成しました。

・起：　現実世界の部屋（夜）
・承：　ゲームの世界に移動
・転：　現実世界の部屋（朝）に戻る
・結：　エンドロール、オチのような空間に移動

そこからそれぞれの空間イメージを作っていくために、アイデアを出します。

転：　現実世界の部屋（朝）にあたる実際のシーン

①まずはシーンに使いたいものを決め、参考画像を集めます。
　部屋、アーケードゲーム機、ネオン管、ワイヤーフレーム状の物体・・・etc

シーンに使いたいものを決め、参考画像を集める

②次に気に入っている単語、言葉を出します。
　これはタイトルに使用したC’est la vie、諸行無常を出して作品の軸にしました。
　そして、ゲームの世界では色々な単語（いずれ終わりゆくもの(笑)）を立体のロゴのように出したいなと思っていたのでこのように案を出しました。ビジュアル的にはなんとなく方向性が決まってきたので、あとは作りながら決めていきました。

実際のアイデアメモ

実際のシーン

　次に仕組み、インタラクションを考える時は「STYLY Magazine」の記事を参考にしました。

シーンの起承転結が決まっていたので何が必要なのか考えやすかったです。

以下のような仕組みをベースに作ることにしました。

・いくつかの空間を移動する
・VRのコントローラーに杖を持たせる
・杖で物体を破壊

(PlayMakerの習得が難しく、作っていくうちに応用的な内容になってきたので NEWVIEW SCHOOLのテクニカルサポートの方々にとてもお世話になりました。本当にありがとうございました。。)

・物体が破壊されたら花火のパーティクルが発生する

パーティクル発生

・ゲーム世界にあるネオンの装飾（点滅、回転）

装飾したシーンの風景

・空間を行き来する際、オブジェクトが表示/非表示される

現実世界に戻ると窓から光が差し込みメモが出現

など、その他ちょっとした仕掛けなどは思いついた時に作りました。

これから

— シーン内でのコンテンツを実装したと際にうまくいかなかったことはありましたか？

武川氏：部屋のシーンの陰影（アンビエントオクルージョン）を表現しようと思い、ポストプロセスを使用しましたが細かい箇所の精度はあまり高くありません。
そのため、3dソフトで影を焼き付けたテクスチャを別途作成、専用のシェーダーを用意して通常のテクスチャに影を重ねました。
STYLYでは、unityのLightmapによる影の焼きこみ情報をアップロードできないので解決策としてテクスチャベイクを行いました。

(※現在(2020/08/25)はLightmapデータをアップロードできるようになっています。）