内閣府のスーパーシティ実現に向けた実証調査事業の一環 レベル4飛行を想定したプロジェクト
本実証は、都市部でのドローンの「有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)」による運航を想定し実施します。病院の屋上から検査機関までドローンでPCR検体を模した物資の輸送を行い、品質面や輸送効率などを検証します。
さらにドローンの「空の道」をXRコンテンツで示し、ドローンを視覚的に認識できる仕組みを構築することで地域住民の認知獲得および受容性向上に取り組みます。ドローンが歩道を横断する際は歩行者に対して”赤信号”で通知するなど、第三者(地域住民)への周知目的でドローンの飛行ルートをXRコンテンツで示す取り組みは国内初であり、地域住民と無人航空機との新たなリスクコミュニケーションの手段となります。
あわせて、ドローンと配送ロボットを組み合わせたフードデリバリーも実施します。往路・復路において複数のドローンで食品を配送し、ラストワンマイルは配送ロボットが公道を走行して個人宅まで商品を届けます。配送効率を検証するとともに公道における配送ロボットの課題抽出も行います。
なお、本実証はKDDIが内閣府から受託した「先端的サービスの開発・構築等に関する調査事業」(注1)の一環として、つくば市の協力のもと実施します。
詳細は以下をご参照ください。
つくば市について
つくば市は、2022年4月に大胆な規制改革を伴ったデータ連携や先端的サービスを実現し、移動・物流、医療・介護、子育てなどさまざまな分野の地域課題を解決する「スーパーシティ型国家戦略特区」に指定されました。スーパーシティには、デジタルを通じて地域の個性を生かしながら地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現するという「デジタル田園都市国家構想」を先導することが期待されています。本実証を通じ、つくば市の都市部におけるドローンおよび配送ロボットの利活用モデルの構築を行い、モビリティサービスの社会実装に向け、課題抽出やルール策定に取り組んでいきます。
本実証について
概要(1) PCR検体輸送検討、XRでドローンの「空の道」を可視化
①背景
2022年12月5日に施行された改正航空法でレベル4飛行が可能となり、都市部におけるドローンの利活用に期待が高まっています。ドローン物流の社会実装の実現には、各種ガイドライン(注2)における無人航空機の輸送ルールなどを整理する必要があるほか、有人地帯の上空を飛行するにあたり、地域住民の受容性を高めていく必要があります。
②実施内容
PCR検体を模した物資をドローンで輸送し、サービス面や運用面における課題を抽出します。車などの輸送手段との比較評価を行い、品質面や輸送効率などの検証を行います。
また、KDDIが提供する「5G XR VIEWER SATCH X powered by STYLY」(以下 SATCH X)アプリを活用し、スマートフォンやデジタルサイネージを通じて「空の道」(ドローンが飛行する航路を可視化)を表示します。実際のドローン運航情報と連携し、ドローンが歩道を横断する際は歩行者に対して”赤信号”で通知します。
③期間
PCR検体輸送検討:2023年1月19日から2023年2月27日まで
「空の道」 :2023年1月19日から2023年3月31日まで
※「空の道」について、PCR検体輸送検討を実施しない期間中は、飛行するドローンをARで再現します。
④配送ルート
筑波メディカルセンター病院(所在地:つくば市天久保1丁目3-1)からつくばi-Laboratory(所在地:つくば市天久保2丁目1-17)まで、約0.3km飛行します。
⑤使用する機体
・PF2-LTE(ACSL製)
実験概要(2)ドローンとロボットを組み合わせたフードデリバリー
①背景
ドローンのレベル4飛行が制度上可能になったことで、都市部での利活用の可能性が高まりました。社会実装に向けて、今後、配送効率と安全性の両面を検証していく必要があります。
また、配送ロボット(低速・小型)は、2023年4月に施行予定の改正道路交通法により「遠隔操作型小型車」として歩行者と同様の交通ルールで走行可能になります。公道において、より安全な走行を実現するため、フードデリバリーなどの具体事例に基づく実証を行い課題抽出していく必要があります。
②実施内容
宝陽台地区の住民の方が遠隔医療アプリのLEBER(リーバー)(https://www.leber.jp/)を使い、療養に必要な商品を注文すると、地域のスーパーマーケットから公民館まで、モバイル通信で遠隔自律飛行するドローンが配送します。公民館では商品を配送ロボットに積み替え、注文のあったお客さまのご自宅前まで自動配送を実施します。歩道の幅員などの環境に応じて、遠隔操作型小型車と歩行者を分離するなど適切な制度・規制への提案につなげることを目的としています。
また、フードデリバリーのドローン2機(往路・復路)と物資輸送のドローン1機の合計3機のドローンを同時に飛行させ、ドローンの運航管理システムで遠隔制御を行い、オペレーションを含めた安全性についても検証します。
③期間
2023年2月20日から2023年2月27日まで
④配送ルート
スーパーマーケット「フードスクエアカスミ牛久刈谷店」(所在地:牛久市田宮町653-1)から、つくば市宝陽台地区の公民館「宝陽台自治会館」(所在地:つくば市宝陽台45)まで、約1.5km飛行し、公民館から先は配送ロボットが注文者の自宅まで走行します。
⑤使用する機体
・PD6B-Type3(プロドローン製)
・自動配送ロボット(川崎重工)
・「小型、軽量」「高い走破性」「広い荷室スペース」のコンセプトで設計・開発された自動配送ロボット。
・川崎重工が開発したハードウェアに、ティアフォーの自動運転ソフトウェア「Autoware」を用いて自動運転化。
各社の役割
協力
「SATCH X」について
「SATCH X」は画像認識によるARコンテンツ表示機能、QRコードリーダー機能に加え、マーカーレスの空間認識によるXRコンテンツ表示機能、一般のクリエイターが制作したXRコンテンツを表示できる機能を持った5G・XRビューワーアプリです。また、「STYLY Gallery」(注3)を「SATCH X」からシームレスに利用できるため、世界中のアーティストやクリエイターが作成した約7万点以上の個性豊かなXRコンテンツの閲覧・体験が可能です。Google社が提供するARCore Geospatial API(注4)によるVPS(注5)機能を強化し、現実の風景と重ね合わさったXRコンテンツを自由な位置から違和感なく閲覧可能になりました。
■「空の道」の視聴方法
・「筑波メディカルセンター病院」と「つくば総合健診センター」の間の「つくば公園通り」にて視聴が可能です。
・スマートフォンから「SATCH X」を起動して、「開催中のイベント」から「スーパーシティつくば」を選択します。タイトル「ドローン 空の道」を選択して周囲の空間にスマートフォンをかざすことで、アプリが周囲の建物などの情報を読み取り、体験型XRコンテンツの視聴が可能となります。
・スマートフォンや「SATCH X」をお持ちでない方も、「つくば公園通り」に設置されているデジタルサイネージを通じて、体験型XRコンテンツを視聴いただくことが可能です。
■ KDDIの取り組み
KDDIはKDDI VISION 2030(https://brand.kddi.com/managementplan/kddivision2030/)を掲げ、中期経営戦略で2030年を見据えた事業モデルの創出に向け生活者目線に立った技術領域の研究を推進する「Life Transformation(LX)」に取り組んでいます。ドローンやメタバースなどの先端的技術を掛け合わせ、多様化が進む消費・体験行動に革新を起こす新たなビジネスの創出を目指しています。
「LEBER(リーバー)」について
株式会社リーバーが提供している24時間365日スマホで医師に相談ができるアプリです。現在290人以上の医師が登録されており、外出自粛などで病院やクリニックに行くのが困難な方も、アプリを通じて医師に気軽に相談することができます。2020年4月9日から茨城県との共同事業として「LEBER」を通じた医療相談サービスを茨城県民に無償提供しています。
・LEBER(リーバー)https://www.leber.jp/
(注1)2022年8月25日ニュースリリース
内閣府のスーパーシティ調査事業に採択、8月25日から取り組み開始
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2022/08/25/6220.html
(注2)国立感染症研究所: 2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル~2021/03/19更新版〜厚生労働省: 医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン (2018年12月)
国土交通省: ドローンによる医薬品配送に関するガイドライン (2021年6月)
(注3)株式会社Psychic VR Labが提供するXRコンテンツのギャラリーです。
世界中のアーティストやクリエイターが制作したXRコンテンツ、XR空間の体験、共有ができるほか、カメラ機能でXR空間内のお気に入りスポットを撮影しSTYLY Galleryへの投稿やSNSへのシェアなどが可能です。コンテンツの体験は、XRデバイスのほか、スマートフォンアプリやPCを使ったWeb視聴も可能です。
(注4)ARCore Geospatial APIは、デバイスのセンターデータと画像データを使用し、ユーザーの位置情報(経度、緯度、高度)を判断するVPSです。Googleのストリートビューで利用されているデータを元に位置情報の特定が可能です。デバイスのカメラから周囲の建物などの情報を抽出し、カメラの向けられている角度や位置情報を高精度で取得が可能となる機能です。
(注5)Visual Positioning Serviceの略。スマートフォンのカメラなどで現実の風景を見た際、デバイスに映った画像を使用してユーザーの位置情報(経度、緯度、高度)をリアルタイムで特定する技術です。
※AutowareはThe Autoware Foundationの登録商標です。