身体性を伴うインターネットミームの体験「TPBG」: kengoshimiz

この記事ではNEWVIEW CYPHER 2021に参加したアーティストの「kengoshimz」さんの作品「TPBG」についてレビューをします。

NEWVIEW CYPHERはXR活動以外の場で活躍するアーティスト・クリエイターがSTYLYを使ってXRを制作するプロジェクトです。

12名のアーティスト・クリエイターが参加し、そのシーンのレビューをPick Up Sceneで取り上げていきます。

 

kengoshimiz

kengoshimizさんについて

kengoshimiz

1996年埼玉生まれ。
高校入学を機に独学で服作りを始める。数年後、作曲を開始。
編入した武蔵野美術大学ではファッションを専攻。この頃ファッションとは服作りではなく、
新しさを主軸としつつ、日常との連結があるものを提案する事と考えるようになる。
卒業制作で発表した、パーツを組み替えて様々な布製品を作り出せるシステムを開発し続けた結果、
純粋な新しさをただ追求したいという欲望と、客観的な評価基準のある場所で発表したいと考え、
“wow”,“much newness”,“many pop”,“such faithful”,“very lovely”を掲げ現代アートを始める。
他にもRakuten fashion weekのランウェイの音楽を担当したり、ビートメイカーとしてビート提供も行なっている。

 

Twitter : https://twitter.com/htksk4
Instagram : https://www.instagram.com/kengoshimiz
HP:https://www.kengoshimiz.jp/

音楽作品のみならず、ニットを使用した作品など、さまざまな形態を通して制作をしています。過去の作品の一つにはインターネットミームの「Doge」を使用したニット作品などがあります。

“Doge” Knit mosaic

詳細:https://www.kengoshimiz.jp/items/47669854

“TPBG”について

このシーンはVRデバイスのみ対応しています。WEBブラウザでは体験できないため、VRから鑑賞しましょう。

シーンを立ち上げると、デフォルメ化された少女と、トランペットを持った少年が立っています。

少年と少女

コントローラーの位置と少年の形状が同期しています。そのため、プレイヤーがコントローラーを移動させたり、プレイヤー自身が移動すると、少年の大きさが変化するようになっています。

シーン自体の情報量は少ないことも相まって、この少年の動きは印象に残ります。

また、右コントローラーのトリガーボタンを入力するとトランペットが鳴る仕組みになっています。

この作品は、コントローラーを使用したインタラクティブによって作品を体験できる仕組みになっています。

コントローラーとのインタラクティブ

しかし、このシーンの目的やテーマ性はこのシーンを鑑賞しただけでは理解できないです。

kengoshimizさんはインターネットミームを取り扱った作品を制作しています。そもそもインターネットミームとはなんでしょうか。

インターネット・ミーム(internet meme)とは、インターネットを通してコピーして拡散される、ネタ的要素の強い画像や動画、文章などの情報のこと。一部のコミュニティで流行したもの、意図しなかった誤字が結果としておもしろかったものなどが、電子掲示板やTwitter、ソーシャルメディアを通じて拡散し、またそこから模倣やパロディが派生し、さらに流行していくもの。「ネットミーム」。”

(「シマウマ用語集」より引用)https://makitani.net/shimauma/internet-meme

そのインターネットミームの一つに「Trumpet Boy」という動画、画像のインターネットミームが存在します。

Trumpet boy

トランペットを持った少年が少女に向かってトランペットを吹いているという一枚の画像を使って、少年の形状を変化させたりすることで音楽と合わせたパロディ映像が話題になり、海外を中心に拡散されていました。

 

このインターネットミームは、Photoshopのような画像ソフトの形状を変化させる機能を面白おかしく表現することによって、ミーム性を見出された映像となっていました。

kengoshimizさんの作品はインターネットミームの性質をVRに置き換えて制作しています。その置き換えによって体験が変容することがこの作品のポイントです。

インターネットミームは、インターネット上の他のコンテンツ同様、「動画」「画像」といった形式での表現となっています。しかし、VRのインタラクティブ性を取り入れることによってその性質が変容します。

VRの特徴である、「身体を使用した体験」となります。そのため、TPBGも自分自身がミームを操作する、変容させる行為を担っている状態で作品を鑑賞します。自分自身がインターネットミームの鑑賞者でありながら、元のTrumpet Boyのように、インターネットミーム作品自体を制作する位置にもいます。

一つのインターネットミームを題材としながらも、鑑賞者によって毎回新しいインターネットミームが生まれる構造となっているのではないでしょうか。

そのように読み解いていくと、VRの性質やインターネットミームの性質の変化について読み取れるかもしれません。

 

シーン

VRの身体性とインターネットミームの関連性について今回は紹介しました。

上記以外の観点のみならず、じっくりと鑑賞することで新しい発見があるかもしれません。

PC / VRからシーンを体験する

以下の画像をクリックするとSTYLY GALLERYのシーンのページへアクセスします。機器を選択し、体験しましょう。

TPBG