ドロステ(効果)とは
ドロステとは、あるイメージの中にそれ自身の小さなイメージが、その小さなイメージの中にはさらにまた小さなイメージが、と限りなく続いていくイメージの効果のことをいいます。
例えば、合わせ鏡。鏡に映る自分が果てしなく反復される現象を体験したことはないでしょうか。こういった現象もドロステ効果のひとつです。
インタラクションエンジニアのAkira Tanakaさんによる作品「DrosTravel」では、ドロステ効果を立体的にARで体験することができます。
本作品は街頭テレビをモチーフに、ドロステ(フレームの中で同じイメージが再帰的に繰り返されていく様)の渦に巻き込まれる体験です。二次元平面におけるドロステは解像度の許される限りとなりますが、三次元空間に果てしなく続くドロステの終点は一体どのようになるのでしょう。
果てしなく続くドロステに吸い込まれる
街頭テレビをモチーフにされた昭和のブラウン管テレビ。その雰囲気を味わうために、外で鑑賞してみました。画面右側のツマミを回すとテレビのチャンネルが変わります。
アナログテレビで放送されるさまざまな番組。その画質は何故だか懐かしい気持ちにさせてくれます。昔の人たちはこうやって街頭でテレビの前に集まり、一緒に番組を見ていたのでしょう。
ツマミを回していると、通常の番組とは違い、テレビの中にテレビが。そしてそのテレビの中にはまたテレビが延々と続いていきます。「テレビからはなれてごらんください」「これ以上近づくとキケンです」といった警告も画面に現れました。
好奇心のまましばらく画面を覗いていると「もう手遅れですね」というメッセージを最後に、ドロステの渦の中に吸い込まれてしまいます。
ブラウン管の中の世界では、ツマミを回すとさまざまなフィルターがかかり、見ている世界の景色が変わっていきます。加工された景色から普通の景色へ戻ることはできません。電源ボタンを押すと画面は真っ暗になり、それ以上何も見ることはできなくなりました。
※本作品はスマートフォンで体験するAR体験です。
※端末は横向きで起動し、オブジェクトを任意の位置に出現させてください。
加工された世界で味わう恐怖
ドロステの渦の先で体験したのは「加工された世界」。テレビを鑑賞する側の世界から、画面の中の世界に唐突にトリップした時、私たちのリアルはどのように変わってしまうのでしょうか。
現代では誰もが一人一台カメラを所持し、あらゆる場でなりふり構わず写真や映像を撮影します。そして気軽に加工したものをSNSにアップしますが、これまで指先一つで加工してきた現実は果たしてリアルと呼べるのでしょうか。本体験において、スマホを片手にもの珍しさを求めて近づいてきた者は、自分自身によって生み出されたドロステの渦に吸いこまれ、「加工されることへの恐怖」を体験します。加工されたリアルに生きる者は、いつしか他者によって唐突に電源オフにされてしまうかもしれません。
作者のTanakaさんの言及する「指先一つで加工してきた現実」。ドロステの渦の先にある世界で、わたしたちは加工する側から加工される側へ立場を変えます。そこで体験する「加工されることへの恐怖」は、思いのままに自分でコントロールする力を奪われることへの恐れや不安なのかもしれません。
ARシーン体験方法
スマートフォンからアクセスしてる方は、そのまま「シーンを体験する」ボタンをクリックしてください(※初めての方は以下の説明もご参照ください)。
クリック後、以下の画面が表示されます。
スマートフォン版STYLYをすでにダウンロードしている場合「Continue on Browser」を選択してください。
そして「Play on Mobile App」を選択するとシーンを体験できます。
PC(Webブラウザ)からアクセスしてる方は、「シーンを体験する」ボタンをクリック後、シーンページのMobileアイコンを選択し、QRコードを読み取るとシーンを体験できます。
スマートフォン版STYLYをダウンロードする
ARシーン体験方法については、以下の記事をご参照ください。
Edited by SASAnishiki