この記事ではNEWVIEW CYPHER Illustration部門のコラボレーション作品である「春と修羅・序」(英名 : mental sketch modified)を紹介します。
春と修羅・序は、イラストレーターの塚本穴骨さんと、awaiさんによって制作された作品です。
この記事では、春と修羅・序に関して、アートの新規性などを軸に、鑑賞ポイントを紹介していきます。
作品に関して
この作品はイラストレーターの「塚本穴骨」さんと、XRアーティストである「awai」さんが制作した作品になります。
塚本穴骨
イラストレーター
2015年からTwitterにて活動開始。
無意識や夢などの内なるものとキャラクターに関心を持つ。
CG制作の中でテクスチャによる偶然性を活かしながらさまざまな質感や色彩でキャラクターの持つ内面のデリケートさを表現している。
Twitter : https://twitter.com/DOnut_bone
Pixiv : https://www.pixiv.net/users/14303613
awai
文化ファッション大学院大学/ここのがっこうを卒業後、awaiとしてファッションブランドのサポート事業を開始。
ブランドのWebサイトのデザインや制作を行う中で、ファッションとテクノロジーの新しい関わり方に興味を持つ。
現在は、Psychic VR Labに所属しSTYLYのUI/UXデザインを担当。また個人として xR × Fashionの領域で活動しており、VtuberのアパレルデザインやTokyo Fashion technology LabにてVRコースの講師を務める。
STYLY Artist : https://styly.cc/ja/artist-program/awai
Twitter : https://twitter.com/awai_afr
AR×Illustrationの組み合わせによる新しいイラストレーションの可能性を探った作品となります。
🎨NEWVIEW CYPHER🎨
xR表現コミュニティ第3弾は、『#ILLUSTRATION』が公開!塚本穴骨さん @DOnut_bone とAR x ILLUSTRATIONの作品を制作させていただいています!
ぜひ、一緒にILLUSTRATIONの可能性を探っていきましょう!#STYLY #NEWVIEW2020 #CYPHER https://t.co/P7Y5Pn0CUb pic.twitter.com/uOmIrqehFz
— awai | AFR (@awai_afr) August 17, 2020
ARを通した鑑賞
「春と修羅・序 」をARで起動すると、低音域が響くアンビエンスの音楽とともに、正六角形のイラストレーションが目に入ります。
穴骨さんの独特のタッチのイラストレーションです。幼さが残る女性の顔が正面に大きく表示され、周囲を粒子が覆っています。
一つ一つさまざまな表情をもったテクスチャの粒子が、穴骨さんの作品のイメージを大きく構成する要素の一つとなっています。
この作品には2つの観点からARのメディアと、イラストレーションとしての可能性を拡張した作品として鑑賞できます。
イラストレーションをARに
一つは、イラストレーション作品をARで表出させる点です。
通常イラストレーション作品を現実空間で鑑賞するには、固定された状態が一般的です。
しかし、ARを使用することで、実空間に直接配置することができます。
通常のイラスト鑑賞体験とは異なる視点が見つけられるのではないでしょうか。
また、イラストの一部がアニメーションになっており、3Dで表示され、かすかな奥行きができている点も興味深かったです。
デジタル化されることによってアニメーションを作成することなどが可能になり、通常のイラストレーションを超えた新しい可能性を提示しています。
アニメーション、パーティクルなど別の要素を組み合わせることで、イラストレーションの境界を超え、新しいアートを表出させることが可能になるのではないのでしょうか。
そして、この作品には、タイトルの引用元でもある宮沢賢治の「春と修羅」の詩がイラストレーションの下部で語られています。
詩をアニメーションとして表示し、作品そのもの自体とリンクさせています。
詩を読むと、この作品のイメージを構築する「青」と紐づいていると読み取ることができます。
この詩では、青は「ひとつの青い照明です」という詩の一節で語られています。同時に、青い照明は、「仮定された有機交流電燈の」と「因果交流電燈の」という修飾語と結ばれています。
この詩を通して、「青」がキーワードになっていることが読み取れます。
詩を読みながら作品を鑑賞することで作品の体験価値を深めることができるのではないのでしょうか。
ARによって、平面では表現されなかった新たな次元のイラストレーションの鑑賞体験が生み出されます。
ARとしての見え方
もう一つの鑑賞ポイントは、イラストレーションとしてのテクスチャです。
通常、ARの作品の多く、特にSTYLYなどは3DCGを使用したり、パーティクルを使用した作品が多い傾向にあります。
穴骨さんが描く一つ一つのタッチには3DCGとは異なるテクスチャによって、イラストレーションのイメージが表象されています。
デジタルでありながら、描かれる生々しさは鑑賞の重要ポイントとなるでしょう。
「ARは3DCGでなくてはならない」「3DCGの知識が必要」といったような固定概念を脱し、イラストレーションとしての面白さ、アーティストとしての個性を表現しています。
ARを“コンテンツ”としてではなく“メディア”としてとらえ、どのようにメディアを使用していくのかが今後のアーティストに求められていることではないのでしょうか。
さまざまなジャンル・シーンのアーティストが、メディアとしてのARをどのような角度から解釈し、表現していくかということが、今後のARのアートを切り開いていくでしょう。
シーン
新しいアートの可能性を感じさせる作品となったのではないでしょうか。
重要なのは、その新しさを通して、何を感じるか、何を鑑賞するかが重要になってきます。
作者はこの作品を” 宮沢賢治の詩が持つ、幻想の感覚・心の動きの現象を表現すると共に、 「見えないもの」をARを通して「見える」ようにした作品です。“と紹介しています。
新しさを理解し、そのうえで作品と対峙して自分なりの鑑賞ポイントを見つけてみましょう。
- スマートフォンから体験する STYLY Mobileをダウンロードし、シーンを立ち上げましょう。ダウンロードの方法は以下の記事を参考にしましょう。
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