混ざり合う記録と呼び起こされる記憶
ドイツ出身の建築家、CGクリエーターでXRアーティストのAdrian Steckewehさんによるこの作品「Semi Memory」は、2022年のNEWVIEWAWARDSで1st Prizeを受賞されました。
大正・昭和時代の写真を素材にしたこの作品は、現実の記録をもとに古き時代のランダムな街の風景をAR・VRで体験することができます。
タイトルのSemi Memoryには「全ての記憶は半分真実である」というアイディアと、ジージーと鳴くセミの声で呼び起こされる夏の記憶という意味が込められているそうです。郷愁漂うこの作品は記憶について何を語るのでしょうか。
郷愁のテーマパーク
まず初めに現れるのはタイトル「SEMI MEMORY」の文字。指でタップすると文字が弾け飛びます。
だだっ広い空き地に佇むパンダの遊具、鬱陶しいほどのセミの鳴き声、つぎはぎのような街の景色。どれもこれも見覚えがあるような、聞き覚えがあるような気がします。街の一角が再構築されたこの空間は、街角のそれぞれの場所に様々な音やアニメーションの仕掛けが施されています。
こちらの作品はAR/VR両方での体験が可能です。ARで体験される場合は実際に歩き回って街の雰囲気を楽しみながら鑑賞することができます。その場合は十分な広さがある場所での鑑賞をお勧めします(屋外で鑑賞する場合は、周囲に障害物や人通り、車通りのない安全な環境を確保してください)。
広場を抜けると、住宅街のような街並みが広がります。道を進めば進むほど様々な景色と音が混ざり合い、私たちの頭の奥底に眠る記憶を呼び起こします。
どこからともなく鳴り響くカンカンという音を頼りに歩いていくと、2台の自動販売機から大量の缶ジュースが飛び出してきていました。
小道から大通りに出ると、一匹の大きなセミが道路の上でじっとしているのが見えました。人も車の気配もない大通りの真ん中で何を思いながらミーン、ミーンと鳴いているのでしょうか。また別の道に出てくると、突然の夕立に襲われました。仮想空間の中でも、真夏のアスファルトに打ちつく雨の匂いが漂ってくるような、そんな感覚が体に流れてきます。
初めてくる場所なのに、どの道を通ってもどの街角に出てきても、いつか来たことのあるような懐かしい気持ちでいっぱいになるでしょう。
ディストピアか、ユートピアか。
NEWVIEWAWARDS 2022で審査員を務められた株式会社パルコ エンタテインメント事業部の小林大介プロデューサーはこの作品をこのように評論しています。
この作品の、継ぎはぎやフォトグラメトリの瓦解した見え掛かり、そして生命感が薄い感じから、ディストピアのような感覚をもたらされる一方、コンパクトに様々な趣旨の異なる空間をまとめた、ある種テーマパークのようなユートピアの感覚も同時に感じる、変な愉快さがあった。人の記憶の中でぼんやりと存在する街の像というのは、こういった印象に残った情景のつなぎ合わせに近かったりするのかもしれないと感じました。
セミの鳴き声や突然の夕立、自動販売機から無数に出てくる缶。そこから生まれる強烈な音は記憶を鮮明に呼び起こすトリガーとなり、眼の前に広がるまばらなテクスチャは、見ている景色を曖昧にさせます。
行ったこともない場所なのに、何故かその街並みに懐かしい気持ちを覚えてしまうこの作品。もしあなたが郷愁を感じるなら、私たちは共通の真実を持っているかもしれません。
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Edited by SASAnishiki