身に纏うことを問い直す「sabachan」:simesabaaa

この記事では ファッションデザイナー / アーティストの「simesabaaa」さんの作品「sabachan」について紹介します。

NEWVIEW CYPHERのファッションから生まれたこの作品でありながら、「衣服」の形を保たず、身に纏うことについて再度問いかける作品となってます。

sabachan

simesabaaaさんについて

simesabaaa

 

1996年、広島県生まれ。
桑沢デザイン研究所夜間部ファッションデザイン専攻卒業。
自分の感覚や記憶を視覚化し、それを人にまとわせることで新たな関係を築くことを試みている。
現在は「抱きしめる」をテーマに活動中。

(NEWVIEW 公式サイトより引用 https://newview.design/works/sabachan/ )

Instagram:https://www.instagram.com/simesabaaa/

2020年には桑沢デザイン研究所での卒業作品を展示しました。

 

 
 
 
 
 
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内臓のような身体の「内側」を、身体の外側に身に纏うデザインを通し、simesabaaaさんにとっての「ファッション」を生み出しています。

桑沢デザイン研究所時代に培った「ファッション」の思想を、XRの作品に昇華したのが今回の作品となります。

sabachanについて

シーンを立ち上げると、抽象的な空間が眼前に出現します。カメラで撮影した画像データの切り貼りや、ネガの画像データが空間を構築しています。

simesabaaaさんが取り込んだ画像データを3Dオブジェクトのマテリアルにし、さまざまな形の写真が配置されています。

抽象

シーンとしての時間軸はなく、静止した空間を鑑賞する作品となっています。

空間を渡り歩くと、その空間は画像によって構築されています。

これらの画像はsimesabaaaさんの本人の昔の写真や、母親の写真のデータです。

simesabaaaさんはこの作品のステートメントについて、以下のように記述しています。

わたしの母は、とても感受性が強く、繊細な人でした。
幼い頃、母は夜中に寝室で一人涙を流していて、わたしはその姿を、壁一枚へだてた隣の部屋で感じていました。それは、わたしにとってすごく長い時間でした。
彼女の丸まった小さな後ろ姿をわたしは直視できず、その震える声をわたしは耳に入れないように、とても長い期間、見て見ぬふりをして生きてきました。

わたしは彼女が悲しい時に、そっとそばに寄り添い抱きしめることができていれば、わたしの愛は彼女に伝わっただろうと、今では思います。
しかし、当時の何もできなかったわたしも、わたしは自ら抱きしめたいのです。

あの記憶は紛れもなくわたしを構成する大切な一部であり、それらをしっかりと抱きとめます。
これは、これからわたしが生きていくために必要な、わたしの愛の空間です。

(NEWVIEW 公式サイトより引用 https://newview.design/works/sabachan/ )

本人たちにとっての記憶の一部となっている道具や写真を2Dのデータとし、3Dの空間に変容させています。

その3Dのオブジェクトと、それによって構築されている空間を鑑賞することで、作者の記憶を追体験する作品となっています。

この作品はファッションにおける「衣服」を体験する作品ではなく、作者の「記憶」を体験する作品です。

記憶

しかし、「衣服」はなくとも、ファッションの性質が失われたとは言えません。

NEWVIEW FEST 2021で開催されたオープニングパーティーではsimesabaaaさんの作品が紹介されています。
(simesabaaaさんの時間は 2:30:02 ~ 2:35:00 )

NEWVIEW FEST 2021 OPENING PARTY from STYLY on Vimeo.

simesabaaaさんの作品を鑑賞したchlomaのデザイナーのJunya Suzukiさんは「この空間にいると、simesabaaaさんの作ったお洋服の肌感覚って、こういう感じなのかな、と想像できた。この空間があって、はじめてsimesabaaaさんを着る機会を得た」と評しています。

この評価は、ファッションにおける「身に纏う」を再度問いかけているのではないでしょうか。

simesabaaaさんの作品は、身に纏うことを通して「記憶」に問いかけています。それを物理的な衣服ではなく、XRを使うことによって。

XRにおける没入体験を、「身に纏う」機能として再構築し、衣服とは違う考え方の「ファッション」をsimesabaaaさんの作品は体現しています。

それこそが、この作品におけるXRの新規性と、ファッションの可能性について評価されるべき作品です。

 

 
 
 
 
 
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シーン

ファッションとXRにおける「身に纏う」ことについて体験する作品です。

是非一度体験し、作者の記憶とナラティブを鑑賞してみましょう。

 

  • スマートフォンから体験する

    STYLY Mobileをダウンロードし、シーンを立ち上げましょう。ダウンロードの方法は以下の記事を参考にしましょう。

作品のダウンロードが完了したら、以下の画像をクリックし、シーンにアクセスします。シーンページのQRコードを読み取ると、作品が鑑賞できます。

sabachan