《Merging Memories》は、アートプランナーの平井 健一郎氏によって制作されたVR作品です。
フォトグラメトリによる街の風景の撮影はますます盛り上がりを見せています。本作は2019年の作品にして、ある街のエリアを広域にフォトグラメトリで保存するプロジェクトを実施した上、その街で生活していた人々の記憶を写真を用いながらまとめている作品です。フォトグラメトリや写真を効果的に配置し、街が見せたさまざまな顔を表現することに成功している作品です。
フォトグラメトリと写真によって保存された街並み
本作はVR空間に入るとすぐに、いわゆるフォトグラメトリらしい風景が広がります。
フォトグラメトリの作る風景は、複数の角度から撮られた写真をコンピューターが合成したものです。それゆえ、実写の写真が持つ現実のテクスチャの風合いや、光と影を写真が保存した様子と、それらがポリゴンに整理されCGらしさを見せる様子が合成された空間を作り出します。
VR空間に現れる写真
VR空間内を進んでいくと、写真が現れます。
これらの写真は、フォトグラメトリに協力してもらった、その街に住む人々によって過去に撮られた写真です。
写真は透過されていてブラウン管テレビのような線のエフェクトが表示されています。そのため、写真の前を動くと写真と背景の像とが重なり、色や形が変わるようにみえ、写真の像が動いているような錯覚を覚えます。まるで、そこにいた人たちの声や動きがその空間に保存されているようにも見えます。あるいは、酔っ払った時の身体感覚と近いかもしれません。
失われゆく風景、二度とないあの夜、そこにいたあなた。
本作の舞台は、葛飾区立石の「呑んべ横丁」です。
夜の街が見せた賑わいやそこにあった人々の温もり、戦後の強制疎開や赤線、青線と呼ばれる日本の歴史のかたわらで生きた人々の人生を、VRやフォトグラメトリという技術を効果的に使って表現した作品です。
変わっていく街並みが、二つの形式の写真で保存されています。
作者は以下のように語ります。
フォトグラメトリは、同じ被写体を撮影した膨大な量の写真から撮影位置や角度などを自動的に予測することで3Dデータを生成する手法です。 つまり、3Dデータを生成する過程である写真がどの場所から撮られたものなのかがわかります。 このMerging Memoriesでは、呑んべ横丁のVR制作に協力いただいた人の写真を撮影日とともに撮影されたであろう場所に 配置することによって、新しい形のアルバムを表現してみました。
(NEWVIEW公式ホームページより)
写真の中には、2019年当時の再開発の様子も見受けられます。
今この瞬間も失われていく街が保存されています。
VRにまとめたアートプロジェクト
本作は、その街で過ごしてきた記憶や、そこに含まれた声や温度ごと保存されたような作品です。
この作品の強度を増しているのは、その場所で生きていた人々が実際に過ごした写真を使っていることと、その写真を撮った人々が、さらに写真を取り直す形でフォトグラメトリを用いて空間を展開していることです。
そうして、実際に住んでいた人の視覚と空間に巻き込まれていく体験がVR作品として成立しています。
これは、アートプロジェクトを記録したVR作品とも、VRとして記憶を保存するために生まれたアートプロジェクトとも言えます。
実際に関係した人々の時間が閉じ込められているからこそ生まれた表現になっています。
ぜひ実際に体験してみてください。
VRシーン体験方法
スマートフォンからアクセスしてる方は、そのまま「シーンを体験する」ボタンをクリックしてください(※初めての方は以下の説明もご参照ください)。
クリック後、以下の画面が表示されます。
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そして「Play on Mobile App」を選択するとシーンを体験できます。
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シーン体験方法の詳細を知りたい方
VRシーン体験方法については、以下の記事をご参照ください。
Edited by SASAnishiki