VRで僕らは幽霊になりあのカフェに集まる。あるいは新しいドキュメンタリー。「Midnight Ghost Café」:Susanne Barthl

《Midnight Ghost Café》を紹介します。

《Midnight Ghost Café》は、幽霊の集まるカフェを題材にしたVR作品です。
ここには、物質的な肉体ではなく幽玄な存在として、複数の土地と繋がりながら行われるナラティブがあります。現代らしさを感じる親しみのあるカフェを登場させながら、しかし同時にここではないどこかへの想像力を巡らせます。

饒舌な幽霊達がくつろぐカフェでは何が起きているのでしょうか。
一緒にくつろぎに行ってみましょう。
あるいは、誰かがあなたとカフェで話しをしてくれたことを思い出すでしょうか。

《Midnight Ghost Café》


《Midnight Ghost Café》


《Midnight Ghost Café》


《Midnight Ghost Café》


《Midnight Ghost Café》

作品は以下から体験できます(VR/HMD推奨・Webブラウザでも鑑賞可能)

VRの場合

HMDデバイスをお持ちの方は、PC(Webブラウザ)から「シーンを体験する」ボタンをクリック後、シーンページのVRアイコンをクリックしてください。

Steam版STYLYをダウンロードする
https://store.steampowered.com/app/693990/STYLYVR_PLATFORM_FOR_ULTRA_EXPERIENCE/

Oculus Quest版STYLYをダウンロードする
https://www.oculus.com/experiences/quest/3982198145147898/

シーン体験方法の詳細を知りたい方
VRシーン体験方法については、以下の記事をご参照ください。

 

Webビューワーの場合

STYLYのWeb/VRの基本操作は以下です。

Webで体験する場合は以下の操作で移動ができます。

マウス 視点を移動させる
W 前に進む
S 後ろに進む
D 右に進む
A 左に進む
Q 下向きに移動する
E 上向きに移動する

画面が小さくて見えにくい時は、右下の四角形のアイコンを選択して全画面表示してみてください。

Webでの操作方法

また、画面右側にある3つの丸いアイコンでは、以下の操作ができます。

Reset Position 最初の位置に戻る
Usage and Setting 移動方法と設定の確認を開く
Change Volume 音量の設定をする

作者による作品の説明

ベルリンのカフェは、味わいのあるコーヒーとペストリーを楽しむため人々が出会う場所ですが、昔の常連たちは、幽霊の姿で深夜に出没します。幽霊たちの物語はプレイヤーと共有します。とても独特の雰囲気があるバーチャルカフェを体験できます。

この体験は、特別な場所であったベルリンのカフェTwo & Two、Neuköllnの思い出のコラージュです。友人の何人かは、ベルリン在住当時そして引っ越しても、私と一緒または私がいなくても頻繁に訪れました。これはドキュメンタリーで、非常に個人的な作品でもあります。世界中のみんなにこのカフェに訪れてもらい、オーナーや私の友人とおしゃべりしましょう。

現実感を作り出すのは、場所だけではなく人々とその物語だと確信しています。今や思いのままにお互いが会える場所がなくなった社会では、VRの中に友人と会える空間を作る必要を感じましたl

現実の空間の写真測量とローポリモデルを一緒にブレンドして、新しいバージョンのカフェにしました。その場所で私と遊んだ人たちの実際のレコーディングからは、いつも私が彼らと遊んで得た暖かで幸せな感情を与えるでしょう。

コーヒーとペイストリーを注文して、この現実の拡張を楽しんでください。

Susanne Barthl

Susanne Barthl

Ms |Germany

Born in Austria, 1986.

Designer based in Berlin.

Instagram: https://www.instagram.com/fiktiverealitaeten/  (@fiktiverealitaeten)

WEB: https://susannebarthl.myportfolio.com

《Midnight Ghost Café》のユニークさ

《Midnight Ghost Café》のユニークなポイントを紹介します。

フォトグラメトリを用いた、暖かい空間の表現

《Midnight Ghost Café》はタイトルの通り、カフェが舞台のVR作品です。
現実をフォトグラメトリで複製したカフェのオブジェクトがどこか頼りなくほのかに崩れているような印象を受けます。
しかしその不安定さが、かえって幽霊達と出会う場所としてとてもマッチしています。
オブジェクトの輪郭がぼやけることで、現実と霊界の境目が曖昧になった空間が夜のカフェを詩的に表現します。

フォトグラメトリで構成される空間

半透明な霊気で表現される幽霊たち

《Midnight Ghost Café》には、さまざまな幽霊が集まっています。

この幽霊のオブジェクトは半透明で、光を放ち輝いています。
VRにおけるオブジェクトの典型的な性質の、触れないことや、曖昧な立体感、のぺっとした質感などの味わいを生かしたキャラクターになっています。

幽霊たち

無重力な空間

カフェに入ると、幽霊が私たちを迎えてくれます。
キャラクターにはそれぞれに話しかけるための吹き出しが3つ並んでおり、そのインターフェースを選択することで幽霊が私たちに話しかけてくれます。
幽霊は空間に文字を展開しながら、私たちに語りかけてくれます。

この空間では、パンやケーキ、クッキーやコーヒーなどを持ち上げることができますが、移動させたオブジェクトは重力に従わず、その場に止まり空間に漂います。

土地を超えて集まる場所

幽霊たちは、現実の人間のようなステータスを語り自己紹介をしてくれます。

英語の立て看板やメニューがある店内ですが、幽霊に話しかけているうちに、幽霊達は世界中から集まっていることが分かります。
日本の子供のような自己紹介をしてくれる幽霊もいます。

幽霊たちが集まっている

幽霊の世界としてのバーチャルリアリティ

バーチャルリアリティにおける幽霊のような存在感を簡単に考察してみます。

オブジェクトがさわれないこと・突き抜けてしまうこと

VRを制作すると、3DCGによって生み出される世界があくまで視覚的に表示されているものだと実感します。
VR上の全てのオブジェクトは物理シミュレーションを与えないと、ものに触れなかったり、重力や弾力などが発生しません。
また、VR上で表示される擬似的な手のイメージは、自分の手の動きを模倣し動きますが、微妙なラグやオブジェクトの揺れを伴ってたどたどしく動きます。

そうしたオブジェクトがまるで幽霊のように感じてくることは、VRや3DCGの製作者に共通の感覚なのではないでしょうか。

VR の手

画像参照:https://knowledge.autodesk.com/ja/support/vred-products/learn-explore/caas/CloudHelp/cloudhelp/2019/JPN/VRED/files/VR-and-VR-Setup/VRED-VR-and-VR-Setup-Hands-in-VR-html-html.html

映像作品やVR作品を数多く発表する谷口暁彦氏の作品にも、オブジェクトが重なったモチーフが出現します。
画像は《んoon Music Video Directed by Akihiko Taniguchi 》より。
こうして物的な性質を無視され視覚情報としてのみ現れた瞬間に、肉体は幽霊のように現れてます。

画像参照:https://twitter.com/hoon_jp/status/1438664490107633666

Meta(Facebook)のアバターと幽霊

Meta社 (旧Facebook社)が発表しているアバターが足がないことも、VRに興味がある人々のコミュニティで話題になっています。

参照:https://about.fb.com/ja/news/2021/08/horizon-workrooms/

こうしたアバターの身体は、脚を持たない日本的な幽霊の身体のイメージとシンクロします。

こうした身体感覚は、ヴァーチャルに存在する土地と実際には地続きではない状況や、家のデスクにいながらもヴァーチャル空間を移動できる足の不確かさなどを表象しています。

『応挙の幽霊』(円山応挙 画)

現在のメタバースブームは、Oculus社を買収し、メタバースの展開に注力することを宣言したMeta社によって火つけられたと言っても過言ではありません。
ボディトラッキング(ユーザーの身体を取得する技術)などのデバイスの技術的な課題によって生まれているアバターの特徴でもありますが、VRの象徴的なイメージの一つになっています。

こうしたVRに見られる幽霊(お化け)のテーマを空間に落とし込んだ作品が《Midnight Ghost Café》と言えます。

ドキュメンタリーの新たな形態

ポストドキュメンタリーとして

ドキュメンタリーは主に映像を媒体として、ある出来事や状況を記録し、他の時間や場所で共有し直す技術です。
このドキュメンタリーは歴史的事実の整理や、逆に歴史に含まれ時にこぼれ落ちるある特定の人物の表情や振る舞いを保存、共有する点で重要なものとして扱われてきました。

しかし現在では、そのドキュメンタリーの持つ力が、かえって撮影や保存、整理する主体による権威の生成や、オリエンタリズムや貧困ポルノ的なものから延長される搾取的な構造を生み出しやすいという点で批判されることもあります。

この《Midnight Ghost Café》は、実存する人物の声やそれに含まれる表情を保存しながらも、話し手と聞き手の関係性や、物質的な身体や会話の文脈・時制を曖昧にするナラティブを産んでいます。

幽霊との会話は3つの選択肢から成り立ちますが、それはどの順番でも、同時にでも選択をすることができ、その関わり方によって物語が形成されたり、あるいは複数の音声や文字の塊を幽霊が同時にこちらに提示してきたりします。

今話したいこと、未来に話されるかもしれない事、過去に話されたであろうことといった会話が、入り乱れながら同時に空間に展開してきているともいえます。

複数の語りが重なって曖昧になることも

もしこうした饒舌な幽霊の振る舞いをバグとして見つめるならば、現代において起きる情報の氾濫も同時にバグとして受け止めることができます。

しかし、それと同時に、そこにある一つ一つの声は優しく穏やかな表情と温度に包まれています。
データになりバーチャルリアリティ上に広げられた声だとしても、幽霊達の鑑賞者における親しげな気持ちはそこにありありと存在します。
そこに現実的な垣根はなく、発話と傾聴の関係性は朗らかに崩れていきます。

オンデマンド・リアルタイム的なコンテンツが氾濫し、リモートコミュニケーションにより世界中が繋がった今日における情報の交換と、そこにいる人々の健気に生きようとする感情が表現されていると言えるでしょう。

現在らしい「参加」が生まれる場所

《Midnight Ghost Café》は、現代の人が集まる形態の不確かさと、それゆえの手探りを象徴する作品だとも言えます。

例えば、この作品の舞台が「パーティー」だとしたら、幽霊達と鑑賞者の体験はまた違うものになったはずです。
人が集まる場の代表例の一つのパーティーは、ホストと参加者を区分けし、社交における儀礼・儀式的な側面を強調します。

『表現のエチカ 芸術の社会的な実践を考えるために』(桂英史, 2020,青弓社)では、パーティが以下のように説明されます。

パーティーの語源はラテン語の「パルティータ(partita)」という「分ける」という意味の言葉に由来する。「participation」に文字通りの意味を汲み取ると、ある集団の一員(一部分)になること、あるいは「部分をなす」あるいは「役割を果たす」ということになる。なるほど、参加はただメンバーとなるだけでなく、それ相応の役割を果たすことになるからこそ成立することなのかもしれない。

このような「集まり方」や「参加」によって生まれる分類する力や、階級化、資本化させる力を巧妙に回避しながら、カフェという場所が選ばれています。

現代は、職業や生活といった近代に生まれた労働者的な枠組みに含まれない時間の使い方を生み出すコンセプトが注目されています。
サードプレイスを標榜するスターバックスや、サードコミュニティと呼ばれる場所の多くが、カフェや飲食店の形式をとっています。
これは、特定の目的に従って集まることに含まれるオーナー・ワーカーといった人々を分類し名前をつける力を解体し、集まるということを飲食するという目的の横に置きながら成立させる効果を持っています。

こうしたカフェという場所を用いて、鑑賞者には会話における自由さや、幽霊との暖かな会話が生まれています。
《Midnight Ghost Café》の現代らしいナラティブはこうした要素の重なりから生まれています。

幽霊になってまた会いましょう

バーチャルリアリティで私たちが幽霊になること、カフェという場所で語り合うその温かみ、参加やドキュメンタリーの方法を解体させながら新たな形の交流を生み出すこと、そうした気づきを《Midnight Ghost Café》からは得られるでしょう。

最後に、カフェの入り口の右側には、猫の目玉のようなオブジェクトがほのかに瞬きをしているのを見つけることができます。
カフェに入る時か、あるいはカフェを出る時、この目玉だけの存在から私たちは見つめられます。

この目玉だけの存在は、何を表しているのでしょうか。
あなたはこの眼差しをどういうものだと思いますか?

恐ろしい一つの可能性としては、身体すら既に失った者たち、つまり本当の幽霊達が私たちとこのカフェを見守っていることを表しているかもしれません。
あるいは……。

目がある

作品は以下から体験できます(VR/HMD推奨・Webブラウザでも鑑賞可能)

VRの場合

HMDデバイスをお持ちの方は、PC(Webブラウザ)から「シーンを体験する」ボタンをクリック後、シーンページのVRアイコンをクリックしてくださ

い。

Steam版STYLYをダウンロードする
https://store.steampowered.com/app/693990/STYLYVR_PLATFORM_FOR_ULTRA_EXPERIENCE/

Oculus Quest版STYLYをダウンロードする
https://www.oculus.com/experiences/quest/3982198145147898/

シーン体験方法の詳細を知りたい方
VRシーン体験方法については、以下の記事をご参照ください。

Webビューワーの場合

STYLYのWeb/VRの基本操作は以下です。

Webで体験する場合は以下の操作で移動ができます。

マウス 視点を移動させる
W 前に進む
S 後ろに進む
D 右に進む
A 左に進む
Q 下向きに移動する
E 上向きに移動する

画面が小さくて見えにくい時は、右下の四角形のアイコンを選択して全画面表示してみてください。

Webでの操作方法

また、画面右側にある3つの丸いアイコンでは、以下の操作ができます。

Reset Position 最初の位置に戻る
Usage and Setting 移動方法と設定の確認を開く
Change Volume 音量の設定をする