極彩色の肉イラストレーションを、VR空間に蔓延させる 「Cryptid life – vol.2」STYLY Online Tour :TOMORO KINOSHITA レポート

TOMORO KINOSHITAさんとSTYLYが開催した、STYLY Online Tour 「Cryptid life – vol.2」を紹介します。

 

STYLY Online Tourは、VR作品を製作者のお話を聞きながら体験できるイベントです。

この「Cryptid life – vol.2」では、VRや、映像、クリプトアートなどジャンルを越えて多くの作品を制作されているTOMORO KINOSHITAさんと、彼の作品を体験しました。

現実では体験できない、色彩豊かな大空間を視界全体で感じ、さまざまな生物を描写した唯一無二のワールドを巡るツアーでした。

TOMORO KINOSHITAさんのプロフィール

VRによって3DCGとイラストを融合させた作品作りを主な活動とする。ポップな色彩と奇妙な生物で視聴者の目を引き止める表現を持ち味としている。もともとイラストから始めた制作活動であったが、自分の世界観に没入させられるVRによる作品制作に挑戦しはじめた。雑音を排除した思い描いた世界観を表現していきたい。

南海キャンディーズ、しずちゃんのYouTubeのオープニング映像の作成なども手がけている。

Twitter: https://twitter.com/rowrow_tt

Instagram: https://www.instagram.com/rowrow_t/

作品: https://gallery.styly.cc/search?q=%23ROWROW%20%23Art

STYLY Online Tour 「Cryptid life – vol.2」

新作を加えた、合計6つの作品を、TOMORO KINOSHITAさんの解説を伺いながら体験しました。

今回の記事では画像で作品を説明していますが、VRでの体験で、より作品の魅力を感じられます。作品リンクより、ぜひご自身で作品を体験してみてください!

作品: https://gallery.styly.cc/search?q=%23ROWROW%20%23Art

ツアーの開始

VRゴーグルを装着してイベントに参加すると、シルエットの輪郭線のような体で表示されている参加者が集まっていました。簡単な操作方法の説明を受けられます。

1.「Same」

上が、一つ目の作品の写真です。

ツアーで作品を観ると言ってもVR空間に入るので、作品が自分の周りを包み、自分が新しい世界に放り込まれるような感覚になります。音楽や、物体の動きが相まって、作品が全身に飛び込んできます。

皮膚の模様をした天井や壁の空間。赤い帯をまとって空間を支えるような姿の巨人。壁から飛び出してくる巨人。デフォルメされてショッキングな表情をした人間の顔の物体。そのキャラクターが描かれた絵画のような物体。膨張と収縮を繰り返す赤く染まった肉のような球体などが並べられています。

VR空間を自由に動き回れるので、巨人やキャラクターと目を合わせたり、キャラクターの視線で作品を見られます。

参加者は、TOMORO KINOSHITAさんの解説をもとに、壁を登って上からしか見ることのできない作品のアングルを楽しんでいました。

2.「Feel It」

2つ目の作品「Feel It」は、空中に雲のような道のある作品です。その雲の道沿いにTOMORO KINOSHITAさんが描かれたイラストレーションが並べられている美術館のようです。

道を進んでいくと「3DCG×illustration」という文字が現れます。そしてそこから奥は3DCGのキャラクターが登場したり、3DCGのイメージが繰り返されるような作品が展示されています。

ここでは、作家の作品制作の変遷の一部を垣間見ることができます。

この作品は、上層階に登れます。そこに登ると、これまでの展示エリアのようなオブジェクトは消え、シーンの床一面は水面になります。そこには巨大な顔のオブジェクトがあります。

このオブジェクトは、3DモデルにTOMORO KINOSHITAさんの顔のテクスチャを貼り付けてあるものだそうです。イラストレーションに3DCGを加えた制作をする中で、ご自身が3Dやイラストレーションと混ざりあった存在になったことを表しているのでしょうか。

3DCGやイラストレーションと一体になったTOMORO KINOSHITAさんのオブジェクトは、空を見つめて、さらに先を目を向けているようにも見えます。

3.「Division」

こちらは、一つ前に紹介した「Feel It」の中に展示されている3D絵画の中に入れる作品になっています。作品の中に、さらにもう一つ作品が入っているという入れ子構造になっています。

この絵画の世界の中に入れる作品。

作品の中に作品のシーンがあり、

入れ子構造になっている。

作品中央には「Cushion」という文字とモニターがあります。そのモニターの周りには人に近い形の人のような顔がついているキャラクターもいれば、人の形とは言い難いキャラクターのような物体もあります。このCushionは、座るものなのでしょうか?

作品の中の矢印に導かれ作品の端の方まで行くと、最後にその作品に覆いかぶさるように映像が流れています。ここでは、3DCGの部屋にイラストレーションが貼り付けられた2Dのモニターを見られます。

3DCGの中に3DCGがあり、3DCGの中にイラストレーションがあり、2Dのモニターの中に3Dがある形で、作品が反復構造をとります。そして、それぞれのオブジェクトに物語を想像させるキャラクターと風景があり、それ自体がエフェクトとなり反響している作品です。

イラストレーションのキャラクターが3DCGとなり空間に受肉することや、そのキャラクターをモニターに出現させるといった、メディア内の関係性をもう一度構造化する試みが行われています。自分自身が作ったキャラクターや、自分自身が作った世界観そのもので遊んでいるような感覚を受けます。参加者自身も、作品のどのレイヤーにいるのかわからなくなるような楽しさがあります。

4.「Fantasy box」

こちらは、タイトルの「Fantasy box」という名の通り、作者のイマジネーションを空間全体に広げたような作品です。

鑑賞中におっしゃっていたTOMORO KINOSHITAさんの下のような言葉が印象的でした。

「自分が作ったイラストレーションをVRで見たとき、なんとも言えない感動がある。」

「こんなに大きな絵を描くことはできないし、動いている物体も、絶対できない動き。」

TOMORO KINOSHITAさんは、作品内でのキャラクターについて以下のようにも語ってくださいました。

「CGやVR空間を作るときに頭に浮かぶ情景はキャラクターを軸にして考えることがほとんどで、 今までは浮かばなかった景色も新しいキャラクターを生み出すことによって背景が浮かび、制作が進んでいきます。 なので、私にとってキャラクターは扉を開けてくれる存在と言ってもいいかもしれません。」

TOMORO KINOSHITAさんのVR作品の中では、VRのメディアを比較的自由に使えるようになったタイミングの作品だそうです。そのため、自分の好きなキャラクターやテクスチャを視界全体に表現することの喜びを感じる作品です。

5.「Common scenery」

こちらは、TOMORO KINOSHITAさんの新作の一つです。大きな部屋と、その2階部分と、その部屋の奥の突き出したスペースの3つによって構成される作品です。

大きな部屋では、2階部分の天井にあたる箇所で、雲梯をしている巨人がいます。また、1つの壁には草原で楽しそうにのたうち回る、体が帯状の人面のキャラクターがいます。もう一つの壁には、頭が伸びて口のついた人面の生物を散歩させている人がいます。また、ところどころに赤いキヌガサタケの傘のような物体があります。

二階部分には巨人が3人います。2人は、ゲームかデスクワークのようなことをしています。一人は、ソファにくつろいでいます。

また、大きな部屋の奥には映像が流れているので、ぜひ見てください。ここまで登場したあるキャラクターの、意外な一面が見られると思います。

6.「Odd lake」

最後のステージ「Odd lake」は、TOMORO KINOSHITAさんが最初に作られたVRの作品だそうです。こちらは、最初の作品ということもあり、STYLYのアセットである蝶や泡のパーティクルなどが使用されています。実験をしながらVRアートを作られていることがうかがえます。Thank you so much for today!!の文字

最奥には、TOMORO KINOSHITAさんの作品を購入できるオンラインショップもありますす。https://rowrowtttt.stores.jp

「Illustration × 3DCG」の変遷を辿って

作品を構成するのは、グロテスクになりかねない色使いや、肉肉しいキャラクターです。しかし、ユーモアや可愛らしさと不思議に調和して世界観を作り出しています。作品に宿る身体性への言及や、ユーモラスな演出が、VRになったことでより鑑賞者を包み込む印象を受けます。

TOMORO KINOSHITAさんは、イラストレーションで独自のキャラクターやテクスチャーが世界観を練り上げてきたのでしょう。そのイラストレーションが、3DCGの表現になることで生まれる映像的な変化を見るのが面白いと感じました。

TOMORO KINOSHITAさんは、もともとイラストレーションの時点で、一つのキャラクターや出来事だけでなく「空間全体」や「世界観」を表現するような絵を描かれていたように思います。そうした絵の特徴があったからこそ、2次元の絵に単に奥行を加え3Dにしたというよりは、2次元の時からあった空間に「時間」や「距離」を加えたような表現になっていると感じます。

VR作品は洞窟のように、一箇所から一望できないものになります。洞窟を一歩一歩進むごとに岩肌や分岐を見せるように、じわじわと世界を体験する形になります。

その時に生まれるのは、リズムだと感じました。TOMORO KINOSHITAさんの作品では特に、独特のキャラクターやテクスチャーが鑑賞者に順に、緩急や意外性を持って音楽のように流れ込んできます。ただ極彩色の絵を一見しただけでは生まれない作品の空間と、その空間を歩く自分とのグルーヴが生まれる感覚になります。

はじめにグルーヴは、VRによって自分の外側からもたらされます。しかし、それだけでなく心臓のように波打つ物体や、腸のようにうごめくキャラクターによって自分の内側が触発され、VR空間と身体のコンサートは内外の境界を溶かしていくように感じました。探索しているうちに、自分の感覚すら極彩色でウネウネとしたシルエットになっている気がしてくるように感じられます。人ですらない何者かのキャラクターと、もはや空間と混ざり合い人でなくなった自分とがダンスできる空間になっていました。

目を瞑るわけでもなく、音楽を止める訳でもないが、この空間は目を凝らすだけでは見えない、耳を澄ますだけでは聞こえない体の音楽、自分の中のキャラクターやユーモアを引き出されるような作品だと思いました。

キャラクターや世界観について

 フランシス・ベーコン《キリスト磔刑図を基盤とした3つの人物画の習作》1944年,Wikipediaより

 作品を見たときの直感的な印象としては、フランシス・ベーコンの絵画と類似性を感じました。ベーコンは、自身の作品に登場する生物を、「人間の姿に近く、かつ徹底的に歪曲された有機体のイメージ」とコメントしています。同様に、TOMORO KINOSHITAさんの作品も、人間がシュールに解体されたようなキャラクターが登場しています。

また、作品内の部屋が3面の部屋で構成される視界になることから、ベーコンの多用した「トリプティック」的な演出になっているように見えます。叫びや孤独に関係するキャラクター等も共通点を感じました。

左から、ベーコンが影響を受けた、戦艦ポチョムキンのシーン(1925年)、叫ぶ教皇の頭部のための習作(1952年)、TOMORO KINOSHITAさんの作品に登場するキャラクターの表情

TOMORO KINOSHITAさんの作品は、ポップなテイストのキャラクターが多く、ベーコンほど悲壮でグロテスクな印象を受けるわけではありません。しかし、キャラクターと巨人の違いはなんなのか? 巨人のみが繰り返す単調な行動はなんなのか? キャラクターとはどのような存在なのか? と考えると、具象的なテーマが浮かび上がってくるのではないでしょうか。

反対に、ベーコンとの違いはやはり作品から感じるポップさや、優しさなのではないでしょうか。ベーコンは、いわゆるスペース・フレームと呼ばれる物体や直線を多く作品に描いています。それは作品内の生物がどのように存在するかをガイドする役割とともに、作品に登場する生物がこちらの世界と隔たった場所にいる印象を生んでいます。しかし、TOMORO KINOSHITAさんの作品では、全てのキャラクターに鑑賞者が近づき、ともに世界を見たり感じたりできるようになるため、作品の中に入り込みキャラクターやテクスチャと同じ存在になり世界を楽しめる印象を受けます。ぜひTOMORO KINOSHITAさんのスペースの中に入り込み、世界観を味わってみてください。フランシス・ベーコン作《ジョージ・ダイアの三習作》1969年,ルイジアナ近代美術館蔵 フランシス・ベーコン展より

最後に

あらためて、ぜひ、VRで体験してみてください!

作品リンク:https://gallery.styly.cc/search?q=%23ROWROW%20%23Art

VRでの体験で作品の魅力をより感じられます。作品リンクより、ぜひご自身で作品を体験してみてください! VR空間に入るので、作品が自分の周りを包み自分が新しい世界に放り込まれるような感覚になります。音楽や、物体の動きが相まって、作品が全身に飛び込んできます。