近年さまざまなVRコンテンツが生まれていますが、VRコンテンツはどうしても仮想空間上で完結してしまいがちです。
VR空間の中にいながらも現実空間に影響を与えるような、現実空間と繫がりのあるVRコンテンツがあると面白いなと思っていました。
そこで現実空間との繋がりのあるVRコンテンツを作れないかと考え、Red Bullを飲みながらVR空間を体験できるRed Bull VR Standを作りました。
今回は実際に展示したRed Bull VR Standを作る上で考えたこと、作り方を紹介していきたいと思います。
サンプル
後ほどご説明しますが、Red Bull VR Standでは3つの空間を制作しました。
Normal、Suger free、Yellowと3つの味のRed Bullを使用したので、それぞれの味に合ったVR空間を制作しました。
STYLY Galleryからそれぞれの空間を体験できます。
ぜひRed Bullを飲みながら体験してみてください。
normal制作: xiangyawen、テルヤマハルキ、aynm
sugerfree制作: Fu
Yellow制作: you_f_i_r_e_
Red Bull VR Standとは?
まずRed Bull VR Standから説明したいと思います。
Red Bull VR Standとは「キマるVR空間を摂取する」というコンセプトの体験型コンテンツです。
こちらで展示いたしました。
ただでさえ飲むと「キマる」Red Bullを、「キマる」VR空間で飲むことで今までにない「キマる」体験ができるVRコンテンツです。
体験者はSTYLYで制作したVR空間を体験しながらRed Bullを飲むことができます。
今回はこのRed Bull VR Standを例に現実世界と繋がりのあるVRコンテンツの作り方、考えたことをご紹介していきたいと思います。
本記事で言う「現実世界と繋がりのあるVRコンテンツ」とはVR空間のみで体験が完結しないコンテンツのことを指します。
使用したツールはSTYLY、Unityのみです。
現実世界と繋がりのあるVRコンテンツを作る上で考えること
現実世界と繋がりのあるVRコンテンツを作る上で考えることは、主に4つあります。
- コンセプト
- 現実世界のオブジェクト
- 核となる体験
- 作り出すVRコンテンツが現実世界においてどのような役割を担っているのか
上記を順番に考えていくと作りやすいと思います。もちろん順序が前後することもあります。
何回か同じステップを踏むこともありますので、ガチガチに縛られる必要もありません。
時には同時並行で考えなければならないこともあるので、柔軟に使ってもらって大丈夫です。
本記事では説明のために1つ1つ順序よく説明していきます。
コンセプト
まずコンセプトを考えます。
何はともあれコンセプトです。
どんなVRコンテンツになるのか、何を体験して欲しいのかといったところを考えます。
自分が実現したいことや「こんなのあったらいいな」くらいの軽い欲望からスタートしてもいいかもしれません。
「絶景を見ながら風呂に入りたいな」「山の頂上でビールを飲みたいな」など欲望を爆発させてみてください。
Red Bull VR Standは、もう一踏ん張り欲しい時、創造性を爆発させたい時、「キマる」必要性に駆られたことがある美大生数人の経験から着想を得ました。
こちらのコンセプト決めがかなり大事です。
VR空間のデザイン、展示空間のデザイン、お客様にして欲しい体験の全ての指針となります。
コンセプトは一言で言い表せるようにします。
この場合は 「キマるVR空間を摂取する」となりました。
次のステップである現実世界のオブジェクトが決まってからさらにコンセプトが明確になる場合もあるので、この時点ではもやっとしていても大丈夫です。
現実世界のオブジェクトを決める
コンセプトが決まったら次はVRコンテンツと繋げるための現実世界のオブジェクトを考えていきます。
今回は「キマる」からRed Bullを連想しましたが、例えばVR足湯を作るのであれば、実際のお湯を用意してもいいかもしれません。
この時に現実世界のオブジェクトとVRコンテンツのコンセプトが一貫しているようにします。
VRゴーグルによって視覚、聴覚をハックされているので、さらに触覚や味覚をハックすることで新たな体験を生み出せます。
今回は「キマるVR空間を摂取する」がコンセプトなので「キマる」オブジェクトが必要だと思い、現実世界で「キマる」オブジェクトを探しました。
その結果Red Bullにたどり着きました。
核となる体験
次に核となる体験を考えます。
このRed Bull VR Standが提供する核となる体験はなにかといったところを考えていきます。
VR空間自体が情報量が多いので、核となる体験が定まっていないとぼんやりとした「なんかVRした〜」くらいの体験になってしまいます。
Red Bull VR Standの場合は、「キマるVR空間の中でRed Bullを飲む」を核となる体験として定めました。
作っている途中で「あれもこれも」と追加したくなってきますが、核となる体験を作ることに集中して不要なものは削ぎ落としていきます。
VRコンテンツが現実世界に対してどんな役割をになっているのかを考える
ここまででコンセプトと現実世界のオブジェクト、核となる体験が決まりました。
次はこのVRコンテンツが、現実世界でどのような役割を担うのかを考えていきます。
体験していただくわけですから、体験する前と体験し終わった後でなんらかの考えの変化や価値観の変化が起こって欲しいわけです。
このRed Bull VR Standが社会的にどういう意味を持っていて、どう体験者の価値観を変えるのかを考えました。
もう一踏ん張り欲しい時、創造性を爆発させたい時、スイッチを入れるときにVRを使う時代が来るかもしれない。
Red Bullと共にVR空間を摂取することで「キマる」パワーを増幅させる未来があるかもしれない。
そんなことを考えるきっかけになれればと思いました。
そこでRed Bull VR Standは、「VRが生活に入り込んできた時をイメージするきっかけ」となる役割を担うと考えました。
VR空間と展示空間のデザインを考える
上記4つが固まったので、実際にVR空間と展示空間を作っていきます。
制作の際には、上記4つで決めたことから外れないようにします。
展示空間のデザインも同様で、上記4つから外れないようにデザインしていきます。
VR空間と現実空間が繋がっている体験をしていただきたいので、展示空間のデザインは重要です。
VRコンテンツと違い、展示空間は多数の人がHMDを装着する前に見る部分なので、見るだけでだいたいコンセプトが分かるようにデザインしていきます。
このとき展示空間のオブジェクトとVRコンテンツの結びつきが破綻していないかどうかを、その都度確認しながら作業を進めていきます。
作っていくうちに「あれ、ここコンセプトと矛盾しているんじゃ…」という場所も出てくるので、適宜修正していきます。
例えばRed Bull VR Standでは、展示空間のオブジェクトとして「キマる」体験やお店であることを想起させるためにネオン風の看板を制作しました。
プロトタイピングを繰り返す
完成品に一発でたどり着くのは難しいので、プロトタイピングを繰り返していきます。
特に現実世界とVR空間を行き来する必要があるので、何度も作っては壊し、作っては壊しという作業もあったりします。
展示での発表
こうして完成した作品を展示します。
展示の際はオペレーションをしっかり組みます。
「どのタイミングでVRコンテンツの体験方法を教えるのか」「Red Bullを飲んでもらうのはいつなのか」などコンセプトがしっかり伝わってかつ楽しんでもらえるようなオペレーションを組みます。
今回は一度Red Bullを飲んで、気分を高めてからVRコンテンツの体験を始めて、体験中も飲んでいただくようにしたかったので、体験の始めにRed Bullをお渡ししました。
オペレーションは体験満足度に大きく影響するので、VRコンテンツの制作同等にしっかりと組みます。
通りがかったお客様へ挨拶をしていき、気軽に体験してもらうなど工夫も挟んでいきます。
下記画像は展示の様子です。多くのお客様にRed Bullを飲んでいただきました。
また、Red Bull VR Standのコンセプト、思想も伝えることができました。
まとめ
仮想空間内で完結することの多いVRコンテンツを現実世界に拡張させる試みができたと感じました。
VR空間を現実世界の物体と結び付けることで、まだまだ多様な表現や体験が作り出せると思いました。
STYLYを使えば、現実世界のオブジェクトを絡めたVRコンテンツや、現実世界と繋がりのあるVRコンテンツでさえも簡単に作れるのでぜひ色々と実験してみてください!
現実世界と繫がりのあるVRコンテンツはまだまだ多くないので、色々と探究できるかと思います!