地下に潜むXRの庭園─SEED SYSTEMS in Berlin 展示ルポタージュ(前編)

今記事では、ドイツ・ベルリンにあるギャラリー、SOMA Art Space Berlinで開催された「SEED SYSTEMS」について前後編に分けてレポートします。

SEED SYSTEMSとは?

2022年9月9日〜30日まで行われたSTYLY主催のXR展示です。

国際的なコンテンポラリーアーティストを中心に、新しいアイデアや手法を持つアーティストを紹介する実験的なプロジェクトスペース「Sky Fine Foods」のミリアム・アーバスと、ベルリンを拠点とし、2010年からグローバルにデジタルアートをサポートする独立した展示プラットフォーム団体「peer to space」のペギー・ショーナンガーがキュレーションを務めました。

展示会場はアートギャラリーがひしめくドイツの首都、ベルリンにあるSOMA Art Spaceです。

今回ドイツ国内外から集まったアーティスト6名は様々な手法やアイデアを駆使し、自然への憧れ、植物そのものの美しさ、新しいヒントなどを、体験者である私達に知覚させます。
そして、未来に生きる人間と自然の関係のポテンシャルを予感したくなるような庭園へといざないました。

STYLY初・ヨーロッパ上陸となった今回の展示ですが、一体どんな内容だったのでしょうか?

ギャラリーまで歩くと、目印として看板が出ていました。

展示会場へ近づくにつれ、少し賑やかだった通りからどんどん静かになっていきます。

建物を入ると中庭へ繋がっていて、さらに奥へ進んだところで見つけたのが地下へ続くこの階段。
やや薄暗く怪しげな雰囲気を前に、不安と期待が高まります。

地下の展示スペースに広がるのはXRの植物群

地下へと降りる階段の先に続くのは緑色に照らされた部屋。肉眼では何も見えませんが、タブレットやVRゴーグルを通して4つのAR作品と2つのVR作品を鑑賞することができます。

SEED SYSTEMという名が示すように、それぞれの作品が自然環境や植物の構造、生態システムに関するテーマを取り扱い、XRメディアによる現実と仮想の入り混じった環境の中で新たなコミュニケーションを問いかけます。

展示されているすべての作品がSTYLYで体験可能なので、ご自宅でぜひ鑑賞してみてください。作品の鑑賞方法については記事の最後に記載しています。

Vegetal/Digital(AR作品)

「Vegetal/Digital」はアーティストのAlison BennettさんによるAR作品です。

タブレットをかざすと、オーストラリア原産のきれいな花や植物が出現します。とてもリアルでシャープなこれらのオブジェクトは一見本物のようですが、よく近づいてみると点の集まりであることがわかります。これらは、ポイントクラウドという点の集合により構成された三次元上の植物なのです。

ARを使ったインタラクティブな体験によって植物の細部が溶解していく様子は、新たな美のかたちを生み出すでしょう。

 

Ultica Portal(AR作品)

Nicholas DelapによるAR作品「Ultica Portal」は、ARをかざすとたくさんの植物が現れます。これはイギリス諸島に生息するイラクサ科のウルティカ・ディオイカという植物をモチーフにされているそうです。

このウルティカ・ディオイカは強力な薬草として民間療養で使われているほか、自然の野生環境の中で土壌を解毒し、生態系を再生し、より多様な植物の成長を可能にする特性を持っています。人間を、そして自然も癒す効果をもつウルティカ・ディオイカ。今日のイギリスの大部分を占める人工的で脱工業化された風景など、一見無視された空間で繁茂しています。

アーティストはこのような野生空間と動植物のリサーチをもとにポストヒューマンのネオエコロジーに反応し、これらの植物が出現するAR体験を通して鑑賞者の心の再野生化を促します。

 

(De)Composition(VR作品)

こちらのVR作品では、バーチャル上で巨大な植物を見ることができます。月明かりに照らされた薄暗い空間の中で大きな植物たちがゆらりゆらりとうごめいており、審美的なアプローチによるデジタルの自然はまるで私たちが小さな虫になったような錯覚を与えるでしょう。フォトグラメトリによって3Dメッシュ化された植物は有機的なデジタル性を醸し出します。

Lauren MoffattによるVR作品「(De)Composition」は、フィクション小説「結晶世界(原題:The Crystal World)」を参照しています。1966 年に J.G.バラードによって書かれたディストピア小説です。人や森、あらゆる全てのものが結晶化していく終末世界の中で描かれる医師とその不倫相手スザンヌ・クレアの物語が描かれています。

アーティストは小説のオマージュとして自然の繁栄と衰退のサイクルと、さまざまな仮想および物理的生態系が人間の動きと行動によってどのようにリンクされるかを探ります。一方で、登場人物のスザンヌ・クレアの失われた物語、失われた女性の声と視点への追悼を捧げています。

この文脈においてテクノロジーは減速と再生のツールとなり、私たちが生きている時代を理解するための新しい技術的アプローチの可能性を表します。

今回紹介する作品はここまでの3作品です。このほかの作品は後編に続きます。

VRシーン体験方法

スマートフォンからアクセスしてる方は、そのまま「シーンを体験する」ボタンをクリックしてください(※初めての方は以下の説明もご参照ください)。

クリック後、以下の画面が表示されます。
スマートフォン版STYLYをすでにダウンロードしている場合「Continue on Browser」を選択してください。

そして「Play on Mobile App」を選択するとシーンを体験できます。

HMDデバイスをお持ちの方は、PC(Webブラウザ)から「シーンを体験する」ボタンをクリック後、シーンページのVRアイコンをクリックしてください。

スマートフォン版STYLYをダウンロードする

 

 

Steam版STYLYをダウンロードする
https://store.steampowered.com/app/693990/STYLYVR_PLATFORM_FOR_ULTRA_EXPERIENCE/

Oculus Quest版STYLYをダウンロードする
https://www.oculus.com/experiences/quest/3982198145147898/

シーン体験方法の詳細を知りたい方
VRシーン体験方法については、以下の記事をご参照ください。

Edited by SASAnishiki