【NEWVIEW SCHOOL2022 講義レポート】面白い作品はココが違うッ!!!(講師:ノーミーツ 小御門優一郎)

NEWVIEW SCHOOL2022の第3回となる今回の講義は、「ストーリー/演出」です。

講師は、ストーリーレーベル・ノーミーツ主宰の一人であり、脚本家・演出家の小御門優一郎さんです。

この講義では、作品から「コンセプト」と「テーマ」を抽出し、著名な映画や漫画を例に出しながら、XR体験をより一層高めていく作品作りについて教えていただきました。

 

講師紹介

 

小御門 優一郎

脚本家・演出家

1993年生まれ。2020年4月の緊急事態宣言下、主宰の1人として「ノーミーツ」を結成し、生配信で上演する「オンライン演劇」の製作を開始。3作の長編公演やオールナイトニッポン55周年記念公演『あの夜を覚えてる』の脚本・演出を務める。第三回公演『それでも笑えれば』で第65回岸田國士戯曲賞ノミネート。YOASOBI「三原色」の原作小説や、リアル脱出ゲームシナリオ、Webドラマ脚本など、執筆ジャンルを広げながら活動中。

 

新ジャンル!オンライン演劇って何?

まずはじめに、小御門さんがこれまで制作してきたオンライン演劇についてお話していただきました。

そもそもオンライン演劇とは、オンライン上での配信を前提とした「演劇的なる映像作品」のことです。その最大の特徴は、「視聴者との双方向性」だと小御門さんはおっしゃります。

役者が作り出す作品の感想や意見を、観客がチャット欄に書き込むことで、リアルタイムで役者が受け取り、その観客のボルテージが役者に伝わることで、演技や表現が変わっていきます。この、コール&レスポンスが「視聴者との双方向性」です。

視聴者との双方向性がシステムとして取り入れられた作品として、小御門さんが、脚本・演出をなさったオールナイトニッポン55周年記念公演『あの夜を覚えている』をご紹介いただきました。

この作品では、観客にリスナーという役割を与えられ物語に参加をしてもらうシステムを取っており、リスナーがメールを送ることで数分後に作品内でメールが読まれます。

そして、このメールによって動かされたストーリーが完結することにより、自分が関与したことで物語が完結したのだという充実感を与えることができるのだそうです

 

次の覇権作品の考え方!

オンライン演劇の制作を通し、「これから熱狂を生むような作品は、観客を巻き込むことができる物語なのかもしれない」と小御門さんは分析しています。

コンテンツの消費量も質も上がり続ける中、目が肥えた人たちにとって、ただ見せられるものは、満足せずにただ消費されてしまう。観客まで巻き込む作品形態やシステムが、この先必要になっていくのだそうです。その点において、XRという技術は他の媒体に比べ観客を物語世界に誘う力があり、可能性に満ちていると感じるとのことです。

 

面白い作品はここが違うッ!!!

ここまでは、オンライン演劇をすることによってわかった新しい知見と、XRの可能性についてご講義いただきました。

ここからは、そもそも面白い作品の作り方って?ということで、作品を「コンセプト」と「テーマ」に分解し紐解いていきます。

 

コンセプトとは、「その作品にしかない魅力」と定義されます。つまりは、一言でどういう作品か説明したものです。

ではどのようなコンセプトが、良いのでしょうか?著名な作品を例に挙げて考えてみましょう。

上記の画像を見ると、面白い作品は改めて見るとコンセプトから面白いことがわかります。

独創的であり斬新で多くの人が興味をもつ設定は、この時点で既に決まっているのです。
それに対して、テーマとは「伝えたいメッセージ」です。

独創性や斬新さなど、角度を求められるコンセプトとは対極に、作品に豊かさや深みを与えるような人間や世界の普遍的なものをテーマとして扱います。

先ほどの作品のテーマを抜き出すとこのようになります。

作品を見ることで、考えさせられるテーマが詰まっていることがわかります。

 

作品の案内人。ストーリーとは?

講義の終盤で、

「ストーリーは観客がどこを追えばいいのかを示すガイド」と小御門さんは仰っていました。つまり、フィクションと言う虚構世界を見るときに、ストーリーはどこを観ればいいかという単なる指示ではなく、観客の興味と関心を誘導していくガイドであるそうです。

優れたストーリーは、興味と関心の赴くまま物語を辿っていけば、自然とコンセプトとテーマに気づけるような構成になっているそうです。

 

課題発表&講評

今回のワークは、始めに各グループ4人に分かれ、事前課題として制作した作品の共有から始まりました。

ARを使って、変哲のない日常に「物語の発端(冒険が始まるきっかけ)」を作る。

初のARの課題です!

作品の説明に加え、物語の「あらすじ文」を書きます。現実世界とリンクするARらしい、考えごたえのある課題なのではないでしょうか。

各グループでの発表は、「床下にゴリラ」「カラーコーンがダンス?」「世界の終わりとかわいいファービー」など、自分にはない発想の作品が多く非常に面白かったです!

 

課題制作作品

小御門さんが、受講生の中から数名の作品をピックアップし講評して下さいました。

選んだ作品はどれも、作品の核となるコンセプトが秀逸であり、なおかつ物語が始まる予感を感じさせる、物語に派生しうるフックが明確だったそうです。

 

個人的にもコンセプトの鋭さが光った作品、インタラクションなどの実装まで計算された作品など、一週間とは思えない作品が多かったと感じました。

 

※以下の作品を体験する方法はこちらです。

 

地球の終わりに?/じんせい

作品の体験はこちら

 

三角コーン / 6emon(岡本 享大)

 

作品の体験はこちら

 

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ / 髙橋初来

作品の体験はこちら

 

(作品タイトルなし) / 冨田 来知

作品の体験はこちら

 

Diminish Gift / 田中 陽 (Akira Tanaka)

作品の体験はこちら

 

厨二イマジネーション / 池田 樹

 

作品の体験はこちら

 

Hello World / 岡本晃樹

 

「マウス」に誘われる / mikio

作品の体験はこちら

 

作品を作る上で、混同しやすいコンセプトとテーマについて改めて解釈することで、自分の制作においての作品構想の考え方がクリアになったと感じる講義でした。

 

Text:寺尾悠(NEWVIEW SCHOOL学生インターンシップ)

Edit:NEWVIEW SCHOOL事務局