本記事では、NEWVIEW SCHOOL卒業生でもある3DCGデザイナーSAKI TAKEGAWAさんに、今回卒業生Featuring企画のために制作された「CUSTOM T.R.I.P」とNEWVIEW AWARDS 2019にてKMNZ PRIZEを受賞された「C’est la vie, SHOGYO-MUJO」 を起点とし、XRを制作するに至ったきっかけや制作秘話、実際にNEWVIEW SCHOOLを受講したことによる制作への影響や変化に関してお話を伺いました。
プロフィール
立命館大学映像学部卒業。
3DCGアニメーションを専攻。
現在は住宅建築系ソフトウェアの開発、3DCGコンテンツの制作を行っている。
NEWVIEW AWARDS 2019では、バーチャルガールズデュオKMNZとコラボレーションする
KMNZ PRIZEを受賞。
STYLY artist:https://styly.cc/ja/artist-program/saki_takegawa
XRに興味を持つきっかけは映像業界での挫折
-自己紹介と現在行っている活動についてお聞きしたいです。
TAKEGAWA:私は普段、建築系のVRコンテンツの開発とか3DCGの制作を行っている会社で色々と働かせて頂いているのですが、創作活動としましては今は半分趣味というか、無理のない範囲で案件依頼と個人制作をマイペースにしている感じですね。
-建築関係のお仕事からこのような創作活動を始めていったのですか?
TAKEGAWA:少し長くなるんですけど、元々学生時代から映像系の学部で3Dのアニメーションを制作していたので、その時から始めていたと思います。卒業後はイベント映像業界に入って屋外の建造物に映像を投影するプロジェクションマッピングの制作に関わっていました。しかし、業界的にも体力勝負なところがあり、一年半ぐらいで挫折してしまって。そこから、CGやVRの知識を活用できる建築業界に行きました。そしてまた自分の時間が取れるようになったので、創作活動が再開できるようになりました。
-その時からVRやARに興味は持たれていたんですか?
TAKEGAWA:そうですね。建築業界に入った2017年ぐらいからVRをやりだしました。前職に居た頃は、ただ機材を触ったりしてただけなんですけど。映像業界でもUnityなどのゲームエンジンを使用する流れが来ていて、上手く時代の流れに乗れましたね(笑)。
-TAKEGAWAさんのポートフォリオを拝見しました。太陽の塔にプロジェクションマッピングされてたと思うんですけど、それも当時のお仕事での作品でしょうか?
TAKEGAWA:そうです。当時社会人1年目だった頃に携わった案件ですね。
-そのような背景があって今の創作活動にも繋がっているんですね。
TAKEGAWA:意識していた訳ではないですが、自然と生かされていますね。
XRは自分の世界に引きずり込める
-TAKEGAWAさんにとって、XRの魅力とは何でしょうか?
TAKEGAWA:最初は単純だったんですけど、ゴーグルなどのデバイスの見た目に魅力を感じましたね。最初は技術的な部分にはあまり興味がありませんでした(笑)。見た目以外だと、VR空間の、見ず知らずの人に知覚や聴覚、触覚などの感覚に影響を与えることが出来る点に魅力を感じましたね。
-なるほど。確かに五感に訴えかけられる点はVRの特徴ですよね。
TAKEGAWA:私は、作品を作っている割にはシャイであんまりアピールすることが得意じゃなくて、こっそりやりたいタイプなんですけど。VRだとSTYLYなどのプラットフォームで作品をアップロードするだけで自分の持つ感覚を感じさせて、自分の世界に引きずり込むことができるんですよね。自分の精神的な秘密の部屋に人を招くことができるような感覚です。私の作品である「C’est la vie, SHOGYO-MUJO」などは自分の私物などをフォトグラメトリしたりなど個人的なことを作品にしています。
-TAKEGAWAさん自身が表現をする上で何が根底にあるのかをお聞きしたいです。
TAKEGAWA:どこかしら、明るいけど明るいだけじゃない、生きづらさや不気味さといった自身の負の部分を昇華させようと意識しているかもしれないですね。それが懐かしさや心地よい違和感にも繋がっているかもしれないです。
カルチャー雑誌「カジカジ」からNEWVIEW SCHOOLに出会う
-では、ここからはNEWVIEW SCHOOLに関連したお話をお聞きしたいです。NEWVIEW SCHOOLで学ぼうと思った経緯は何でしょうか?
TAKEGAWA:きっかけは先ほども言ったように、元々映像クリエイターを一回過労で挫折して今の住宅系のVR開発をやっていて。今の仕事をやるようになってからせっかく3DCGの基本的な知識もついてきたので、仕事ではハウスメーカーさんと企業向けのBtoBの仕事を真面目にやってたんですが、それだけじゃちょっともったいないかなというのと、元々クリエイター寄りだったこともあり、クリエイティブなことをしてみたいなと思いました。職場の上司も理解があって、会社の支援でNEWVIEW SCHOOLに参加できました。
–NEWVIEW SCHOOLを知ったきっかけは何でしょうか?
TAKEGAWA:仕事柄、XR情報サイトを定期的にチェックしてて、2018年にNEWVIEW AWARDの第1回をやっているのを見つけて、その翌年の2019年にNEWVIEW SCHOOLっていう学校を作るらしいというのを聞いて面白そうだなと感じていました。それと、関西の方でファッションカルチャー雑誌の「カジカジ」っていう雑誌があるんですけど、そこの雑誌が運営されてたコンパスっていうウェブメディアで紹介されてたんですよ。それが主なきっかけになりましたね。
-XRを学習する中で色んな選択肢があったと思うんですけど、なぜその中からNEWVIEW SCHOOLを選択したのかお聞きしたいです。
TAKEGAWA:そうですね、XR界隈、特に関西の方は当時そこまで盛り上がってなくて、メインは東京というイメージがありました。また、ゲーム系のXRの勉強会は多くあると思うんですが、アートやファッション、音楽好きな人なども対象になって幅広くジャンル問わない感じが良いなと思いました。しかも京都で学校をやってくれるということだったので、やるしかないな、と思いました。
-NEWVIEWSCHOOLに入学してどのようなことを学んだのか、何が印象に残っているかをお聞きしたいです。
TAKEGAWA:1期生の時は、畳の部屋でパソコンを開いて、合宿みたいな雰囲気でしたね。ただそれがすごく新鮮でした。参加されてた他の受講生の方も面白くて、名前を聞いたことがあるような会社の方だったり、いろんな職業の方がいました。受講生同士の交流や情報交換もすごく印象的でした。授業もゲスト講師の方のオンラインでの授業とUnityの使い方も毎回対面で教わってたので丁寧に初歩から教えて頂いて面白かったですね。
-当時は何人ぐらいだったんですか?
TAKEGAWA:20人いなかったぐらいだったかなと思います。
-NEWVIEW SCHOOLを通してunityの使い方などテクニカルな部分はもちろんですが、XR作品を制作する根本的な部分の学びで何か印象に残ったことはありますか?
TAKEGAWA:印象的だったのは、evalaさんという方の、音の重要性、視覚的な情報がなくても体験者にどういう感覚を与えさせるかという部分の考え方が面白かったですね。映像、イラストやグラフィックを今までやっていたのもあり、そういう考え方もあるんだなと考えさせられました。また、菅(すげ)さんという方の授業で、人の目線をどう誘導させるか、という授業も参考になりました。
菅さんの授業はこちらの体験レポートをご参考ください。
CGがあまり得意ではなかった
-NEWVIEWSCHOOLを経て現在個人で作品制作をされていると思うのですが、自分で制作できるようになるまでに大変だった部分などをお聞きしたいです。
TAKEGAWA:CG制作は学生時代からやっているんですが実はそこまで得意じゃなくて。ソフトの使い方も気合で何とかしていました。現在の建築系の仕事を始めて、ソフトの使い方などはそこで仕事をしながら学びました。やはり追い詰められないと勉強できないなと感じましたね(笑)。Unityなどのゲームエンジンも覚えることが沢山あるので、かなり苦労しましたし、最初の1年は全然慣れませんでした。1~2年ぐらいでようやく基本的な部分は習得できたかなという感じです。
-現在は主にBlenderとUnityをメインの制作ツールとして使用されているんですか?
TAKEGAWA:そうですね。それに加えて時々3ds Maxを使っています。
-3DCGのソフトは何から使い始めたんですか?
TAKEGAWA:最初はMayaで、そこから3ds Maxを使い始めましたね。Mayaは、学生時代にカリキュラムの中で使い方を教わっていました。社会人になってから3ds Maxを使い始めました。Blenderは3ds Maxから徐々に移行していった感じです。
-3DCGを勉強するに当たって共通の部分やここは押さえてると良いところはあったりしますか。
TAKEGAWA:ソフトによって癖が全然違うんですが、基本的な3Dの概念は一緒なので、その概念的な部分を押えると良いと思います。例えば、UV展開の概念は基本的にどのソフトも一緒ですね。現在仕事でフォトリアル寄りのモデルを作っているんですが、UVのスケールを実寸に合わせたり、がたつきを揃えたりなどを意識しています。個人の制作でも丁寧に作るという部分は意識していたり、容量の問題もありますね。データの容量を押えたりなどの問題は、STYLYやVRで使用する際に重要になってくるのでこれも普段から意識しています。
-普段の生活の中でどのように勉強してるのかをお聴きしたいです。学習方法やルーティンワークはありますか。
TAKEGAWA:毎日これをやろうみたいなとかは全然やってなくて。例えばこういうものを作りたいからこれをやるにはどうしたらいいのか、チュートリアルを探したりサンプルデータを探したりなど、作りたい物をイメージしてそれを実現するにはどういう手段をとったらいいかを考えています。「作りたいものがあって、それをどう作るか」という過程の中で自ずと学んでいるという意識ですね。
「CUSTOM T.R.I.P」について
-過去作品「T.R.I.P」をカスタムされた作品になると思うのですが、今回の作品の制作過程や、考えをお聞きしたいです。
TAKEGAWA:今回の依頼は私が作ったシーンを他の人が触って何かができるインタラクティブなシーンということを最初に伺って、創作の知識がない人でもそのシーンを使って遊ぶことが出来る作品にしたいなと考えました。2年前、2020年に作った「T.R.I.P」という作品の一部を使用した作品になっています。リミックスのような感覚で他の人に自由に動かして遊んでもらおうと考えました。イメージとしては、レゴのお家セットを意識して作ってます。
デフォルトの完成形がデフォルトのシーンとして用意されているんですが、それを体験した方が大きさなどを組み替えて、全然別の物にしてしまって良いように作っています。
「自分の作品をどう伝えたいか」に考え方が変化した
-NEWVIEW SCHOOLの受講以前と以後で作品制作に対する姿勢の変化や学んだことをどのように生かしているか、お聞きしたいです。
TAKEGAWA:NEWVIEW SCHOOLを受講する以前は、自分は楽しく作れたらそれに満足してしまってたんですが、NEWVIEW SCHOOLに入って、AWARDSに入賞させてもらえたりする中で、思っていたよりも自分の作品を見て頂けるんだなと感じました。それを経て、自分の作品を体験する人がどう思うか、自分の作品をどう伝えたいかを今までより意識して考えるようになりました。体験者について意識するようになりましたね。
-最後にNEWVIEW SCHOOL受講生やこれから受講を検討してる方に対して、一言あればお願いします。
TAKEGAWA:NEWVIEW SCHOOLを受講したことによって自分の表現、制作が大きく変化したなと感じていて、世界が広がったなって思いますね。個人的に知り合いも増えたし、STYLY関連でいろいろお仕事もさせて頂いたり、受講生同士で個人的なお仕事のやり取りをしたりなど、様々な人との繋がりができました。非常に実りがあったので、受講される方や今受講されている方も、楽しんでもらえたらいいなと思います。
CUSTOM T.R.I.P を自分でアレンジしよう
NEWVIEW AWARD2020にてファイナリストに選出された「T.R.I.P」を今回の卒業生Featuling企画のために「CUSTOM T.R.I.P」として再構築。
シーンをコピーすれば3DCGの知識が無くてもワールドを作り変えたり、大きさを変えたりすることで自分なりにカスタムできるシーンになっている。
WORKSの使用方法
STYLY Studioにシーンをコピーする方法
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Edited by SASAnishiki