美術家である光岡光一さんによる《「 。」》という作品を紹介します。
本作は平砂アートムーブメント2022 わたしより大きなりんかくが見える(以後HAM2022)にて発表されました。都市を舞台にしたパフォーマンスが一度は規制を受け、それを乗り越える方法として見えないものになりえた声をARで展示した作品です。空間の線引きによって生まれる表現の不自由さに対し、新たな線を空間に引き直しそれを詩とすることによって、街に新たな輪郭を本作は与えています。
本作では、美術家 光岡幸一さんが継続して発表してきた「poetry taping」をつくばの広場にARで広げています。
街や自然の物質や風景をキャンバスに、文字を重ね、文字の輪郭や皺が呼吸し、背景と馴染んでいくように「poetry taping」は表れます。それが貼られた場所の温度や匂いと文字が混じり合い、私たちを詩の中に取り込みます。文字は漫画のセリフや効果音のように空間に居座り、空間が文字を孕むために画家に書かれたかのように異化されて見えてくることすらあります。
本作でARを用いた経緯を、HAM2022のサイトで光岡さんはこう語ります。
「わたしより大きなりんかくがみえる」
本展のタイトルにあるこの「りんかく」とは、街中での見えない線引きの様なものの事だと思っている。
近年街ではスケボー禁止や花火禁止など、できない事がどんどん増えているが、そのOKやOUTの線引きを、もう一度考え直すきっかけを作る事が今回の目的なのだ。
そこで僕がやろうとしたのが、去年東京の隅田公園でも行ったパフォーマンスで、高所作業車から手書きの言葉を書いた布を、掛け軸を垂らす様にクルクルと出現させるというものだった。
これをつくばセンタービルの広場で行おうと考えた。
トップダウンの開発によって近代化したつくば、それに反発する形で設計されたセンタービル。街の線引きのほつれを探るのには良い場所だと予感したのだ。
書かれる言葉は、開発された当時の事を住民の目線から記録した本「長ぐつと星空」や、つくばセンタービルを設計した磯崎新氏の言葉など、この地にまつわる人々から引用したものを書写するつもりだった。
8月下旬ごろ、そのプランに行政側からストップがかかった。
(中略)
ちょっとはみ出してみる事や、それにつられて何かやってみる、といった経験を共有する事で街が柔らかく開いていくものだと思っていたのだが、自分のパフォーマンスは街にとってはノイズでしかなく、とにかく文字を出す事はできなくなった。
許可されなかったのは普通に残念なのだが、思いもよらぬ形で街の見えない線引きがまじまじと可視化されたのは、自分にとってとても興味深い出来事だった。
そこで思いついたのが、見えない言葉で応答する事だった。
具体的に言うと、AR技術を用い、センタービルの現地で空中に文字を書き、仮想空間で可視化するというものだ。
そして僕は、どんどん禁止事項が増えていくこの場所に「水にふれて冷たいと感じていい。」や「ただただ遠くをながめていい。」など、どうでもいい許可をどんどん書き増やしていった。
(HAM2022のサイトより引用)
線引きによって生まれる表現の不自由さに対し、街に線を引き直しそれを詩とすること、そうして生まれた詩は街に新たな輪郭を与えています。
このようにして生まれた詩を見ていると、言葉が自由に空間に浮遊するその力強さが僕らを励まし勇気づけるような感覚を覚えます。
本来はつくばセンタービルの広場で鑑賞するものですが、STYLY Mobileアプリでどこでも開けるので、その言葉ひとつひとつをぜひお読みください。
また本作はNEWVIEW SCHOOL卒業生の中村太誠さんが技術協力で参加しています。
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Edited by SASAnishiki