2Dと3Dの境界への接触「Paradise (Type: Ice)」: cpnnn

この記事は、NEWVIEW CYPHERコラボレーション作品の「Paradise(Type: Ice)」(以下、Paradise)を紹介します。

Paradiseは3DCGアーティスト&デザイナーであるcpnnnさんによって制作されたAR作品です。

NEWVIEW CYPHERの「#Graphic」のコラボレーション作品として提示されました。#Graphic部門では、グラフィックの新しい役割や表現、体験を探求することが一つの目標とされました。

ParadiseはARのメディアの性質と、グラフィックの性質の2つの領域の複合体験によって、拡張されたAR体験を引き起こします。

その鑑賞ポイントについて解説します。

Paradice(Type: Ice)

cpnnnさんについて

cpnnnさんは3Dアーティスト・デザイナーであり、国内外のアーティストへの作品提供やコラボワークを発表し、場所・言葉・次元を超えて活動しています。

 

cpnnn

Instagram : https://instagram.com/cpnnn_

グラフィックは3DCGをメインとしてさまざまなアーティストへ作品を提供しています。

過去作品には、ex-禁断の多数決の加奈子 / ベイビー・ブルーβさんの別名義「B L U E wave」によるEP “熱帯夜”のジャケットデザインがあります。

 

熱帯夜

cpnnnさんの作品は、ライティングとマテリアルのカラーの組み合わせによってオブジェクトの存在感を引き立てています。80’s~90’sを想起させる光沢とカラーリングはどこか郷愁を感じさせます。

Paradiseでは、そのマテリアル・レンダリングがポイントとなります。

Paradise(Type: Ice)について

本作品はARによって体験できる作品です。

シーンが始まると、金属質感の花、球体、幾何学図形などのオブジェクトが宙に浮いています。

マテリアルは光沢が表現され、cpnnnさんの作品の特徴が表れています。

水色、ピンクなどのカラーの光沢が現実空間に配置され、現実のテクスチャとの対比で浮かび上がってくる異質性を鑑賞者に対面させてくれます。

現実のテクスチャとの対比

その異質性は、カラーやテクスチャだけではありません。

この作品の花や球体のオブジェクトはよく見ると、2DCGです。つまり、画像データです。

一見すると、マテリアル・ライティングの質感によって3DCGのように錯覚してしまいます。この作品は、グラフィックの異質性と我々の認識の隙間を利用しています。

平面

私たちは、スマートフォンやPCのモニターで3DCGを見ることが当たり前になっています。
それらの既存のメディアに対して、ARは身体性を備えています。

ARでは、オブジェクトを鑑賞するために360度さまざまな角度から見ることができたり、身体を動かせば別の場所から観ることもできます。

デバイス上で表示されたグラフィックは通常平面上にレンダリングされ、一つの面からしか鑑賞できません。ですが、ARによって空間が拡張されることで、そのメディアの制約が取り払われます。

身体性

この作品を鑑賞する行為を通して、ARによるグラフィックは空間、身体などをも巻き込み鑑賞体験の幅を広げるメディアになっていることを感じさせられます。

そして、私はこの作品を鑑賞していて、「そもそもグラフィックとはなんなんだろうか」と、そんなことが頭をよぎりました。

IT用語辞典「e-Words」では以下のように説明されています。

グラフィックとは、写真やイラスト、図形、記号、文字(タイポグラフィ)などの視覚的要素を組み合わせ、特定の目的や方針に基づいて平面上に構成された表現。また、コンピュータ上の画像や、その処理・出力のための機能。

ここでは平面上、と定義されています。しかし、ARによるグラフィックは果たして平面なのでしょうか?

いままでグラフィックを描画してきた多くは、モニターなど平面を利用したメディアデバイスとなってきました。

しかし、スマートフォンの性能の向上により、ARによって現実空間をメディアの一部にしたり、眼に取り付けるタイプのMRデバイスはより画面の制約を超えたメディアデバイスとなり、多様な空間を取り扱うようになります。

その時、グラフィックが果たす役割は一体どういったものになるのでしょうか。既存の2Dの画像データはどういった性質を帯びるようになるのでしょうか。

まだ発展段階のVR/AR/MRのグラフィックの可能性について考えていくのも、ひとつの面白さではないでしょうか。

cpnnnさんの作品も、そんなことを考えながら鑑賞してみることで、自分なりのグラフィックの可能性について接触する機会を得られるのではないでしょうか?

メディアとグラフィックの未来

シーン

ARとグラフィックの今後についてもしかしたら私たちは歴史的な時間を共有しているかもしれません。

そんな未来に向けて、一緒に希望を持ちながら鑑賞してみましょう。

 

  • スマートフォンから体験する

    STYLY Mobileをダウンロードし、シーンを立ち上げましょう。ダウンロードの方法は以下の記事を参考にしましょう。

作品のダウンロードが完了したら、以下の画像をクリックし、シーンにアクセスします。シーンページのQRコードを読み取ると、作品が鑑賞できます。

シーン

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