重機たちのダンス「familiar」: FUKUPOLY

この記事では、NEWVIEW AWARD 2018ファイナリストのFUKUPOLYさんによるVR作品「familiar」をご紹介します。作品の鑑賞方法については、記事の最後に記載しております。

常夏の島で踊る重機たち

「familiar」はNEWVIEW AWARD 2018ファイナリストのFUKUPOLYさんによるVR作品です。

クレーン車やショベルカー、大型トラック等の重機が青空の下で楽しそうにダンスを披露している工事現場。踊り狂う重機たちによって活気づけられる一方で、破壊された建物や海に流れる液体、疲れ切って横たわる重機たちから漂う退廃的な空気。とある島にて、創造と破壊が隣り合わせの不思議なパラダイスが描かれています。

作者のコメントより

仮想の島に「重機」たちが群がりブレイクダンスを踊っている。一見楽しそうに見えるが…
「創造とは」「破壊とは」「生きるとは」…

NEWVIEW公式ホームページより)

 

工事現場でブレイクダンス

小気味いいサウンドに合わせながら、シャベルがおしゃれな安全ヘルメットが激しく踊っています。

こちらではホイールローダーがフロアを決めています。

腕の動きがセクシーなショベルカー。

工事現場のコーンたちも、崩れかけた建物の上で楽しそうに踊っています。

ダンプトラックも、重そうな頭を揺らしながら軽快に踊ります。

その一方で、簡易トイレたちは海辺でまったりと時を過ごしています。

こちらのクレーン車は、鉄球を振りながら破壊のダンス。

家や高層ビル、商業施設もノリノリで踊っています。

天使の輪がついた真っ白な家。

雲の上からリズムを刻みます。

破壊される建物。

新しい家やビルとは裏腹に、生命の気配がない廃墟。

そこには踊り疲れたヘルメットやコーン、重機たちが横たわっていました。

お酒を飲みすぎたようにも見えます。

綺麗な海に流れていく七色の液体。これは一体なんなのでしょうか。

大量のヘルメットたちも海に浮かんでいます。

重機たちが踊るこの島は、不思議なパラダイスです。

アーティスト紹介

FUKUPOLY
映像作家、VFXアーティスト |日本

1977年群馬県生まれ。武蔵野美術大学 造形学部 建築学科卒業後、独学で3DCG、VFXを学びDigital Artistとして活動を開始する。2014年1月より「株式会社FUKUPOLY」代表。企業CMやミュージックビデオなどのCG制作や、CG・VFXを使った映像、インスタレーション制作から3Dプリンタを利用した立体造形、ヘッドマウントディスプレイを利用した360度空間映像制作など幅広い分野で活動中。

HP:https://fukupoly.myportfolio.com/

破壊と創造の狭間で

重機たちが踊るこの工事現場。解体される構造、壁。重機は、破壊のシンボルを司る一方で、建設の役割も果たします。解体工事のように見えるこの現場も、同時に建設工事の真っ只中なのかもしれません。

建物は建てられ、その後、時間の経過とともに崩壊します。建築資材の森林は伐採され、時間の経過と共に枝葉を伸ばし、再び成長します。このような破壊と創造のサイクルは、今日の私たちが暮らす資本主義社会で日常茶飯事に見られる現象です。企業は利益を上げるため、天然資源を活用し、インフラストラクチャを構築し、製品を生産します。その資源が使い果たされると市場は枯渇し、また別の市場を開発・創造します。文明の進歩と資本主義が密接に関わり合う私たちの社会では、その破壊的な側面を無視することはできません。

例えば、都市のジェントリフィケーション(都市の高級化とも呼ばれる考え方のこと)では、都市部の治安の悪い地域や低所得者層の暮らす地域を改修し、荒廃・衰退した地域を活性化する目的で投資が行われます。これは中流階級や上流階級の人々にとっては魅力的ですが、そこに長年住んでいた人たちの生活費を圧迫し、別の場所に移住せざるを得ない現象を引き起こします。新しいものを創造するには、その裏に犠牲や破壊が伴うのです。

このように私たちは創造すること、そして破壊することの両方が可能です。原材料を見つけ、創造の力でそれらを使って家、道路、橋を作ることができますが、それを壊すこともできます。新たな命を産むことができますが、それと同時に争いでその命を奪うこともできます。芸術、音楽、文学を創造することができますが、それを破壊することもできます。

かつてパブロ・ピカソはこのように言いました。

“いかなる創造活動も、はじめは破壊活動だ”
(“Every act of creation begins with an act of destruction” )

この言葉は、芸術的創造性の文脈で意図されたものでありますが、真に創造的であるためには、古い知識を破壊し新しいものを構築する必要があるとピカソは信じていました。否定と破壊の焼け野原に、肯定と創造が初めて居を構えることができる。そうやって破壊と創造を密接に絡め合わせながら、ピカソは常に新しいものを生み出していたのでしょう。

創造と破壊、そのバランスを見つけることは容易ではありません。創造する以上のものを破壊すると、私たちの文明は崩壊します。作者の問いかけ“「創造とは」「破壊とは」「生きるとは」…”は、そういったことについて考え直す機会を私たちに与えてくれているのではないでしょうか。

 

 

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Edited by : SASAnishiki