バーチャルにおける境界を表現した作品 「INTERSUBJECTIVITY(間主観性)」: God Scorpion

この記事では、NEWVIEW AWARDS2019のファイナリストとして選ばれたVR作品「INTERSUBJECTIVITY (間主観性)」を紹介します。

この作品はメディアアーティストであるGod Scorpionさんがアートディレクターとして中心になり、制作されました。

現象学の考え方をベースに、3DCG、音楽、プログラミングを駆使したアート作品となります。

 

INTERSUBJECTIVITY

作品に関して

INTERSUBJECTIVITYは、メディアアーティストのGod Scorpionさんがアートディレクターとして制作された作品です。

 

God Scorpion

God Scorpion

魔術、テクノロジー、時間軸、空間軸のフレームの変化をテーマに作品を製作。
主な作品に2014年度文化庁若手クリエイター育成事業採択『Stricker』。DJVR空間ジョッキー『Spatial Jockey』東京リチュアル、バンギ・アブドゥル氏との共作でVRリチュアル作品『NOWHERE TEMPLE Beta』。KYOTO EXPERIMENT 2016/Whuzen Peforming Art Festivalにて篠田千明『zoo』VR Director。世界初のMixed Realityショッピングアプリケーション「chloma x STYLY HMD collection」など。

HP: godscorpion.com

プロジェクトとして制作された作品となり、以下がそのプロジェクトメンバーとなります。

Art Director : God Scorpion
Engineer : Jota Naka
Music : 食品まつり a.k.a Foodman
Movie Edit :  METACRAFT
3DCG Programmer :  haquxx
Management : Ryohei Watanabe/awai

INTERSUBJECTIVITY(間主観性)を鑑賞する

作品が始まると、体験者はアンビエンス・サウンドと共に森の中に立たされています。そこにはさまざまな動物が生息しています。

エフェクトと共に、動物がバラバラになり、その動物は植物と共に融合し、一つの新しい生命体へと生まれ変わります。

3DCGを通した演出により、現実では構築できないイメージを作り上げています。

注意深く観察すると、バラバラになった動物・植物一つ一つは何かを認識することができます。しかし、分解・融合された新しい生命体自体が何かは、私たちが理解することが難しいと思います。

以下の画像であれば、この生命体は「象」であり、「鳥」であり、「草」であると認識するが、果たしてこれはいったい「何」でしょうか。

 

「象」であり、「鳥」であり、「草」であり、何か。

私たちは、この生命体を何と認識するのでしょうか。

個々の要素を認識することができるが、その全体を認識することができない状態に鑑賞者は突き付けられます。

現象学では、意識の志向する外界を受け入れるのではなく、対象を認識した際の「自分の意識・内面」を考えることが重要となります。

INTERSUBJECTIVITYでは、この現象学の考え方を作品に落とし込んでいるのではないでしょうか。

God Scorpionさんはこの作品を以下のステートメントともに発表しています。

現象学の世界では全ての環世界が相互に影響しあい
「私」を中心とした主観的自我が融即されている事を「私」とする。そうした世界では自己の身体と環境という
これまで自明と思われていた明確な境界すらあいまいになり

自己そのもの
自己と他者(人)
自己とオブジェクト(モノ)
自己と自立型エージェント(機械)
自己と環境
などが多様な次元で拡張と混在した形で顕在化する。
我々がもつ自我や主観性はヴァーチャルとアクチュアルが曖昧になる形で融合している。

人、オブジェクト、自立型エージェント、環境といった全ての自己から見た客体が分割、統合され主体として成立する身体を彫刻する。

ヴァーチャルの世界を通して、アクチュアルな視点を私は問いただされているのではないでしょうか。

(ここで述べるアクチュアルは「自分と環境のなかで最適化された現実の認知」となります。

VRは現代の魔術だーーゴッドスコーピオンが見通す、人間の能力が拡張した近未来」(2018.03.01)より引用
https://realsound.jp/tech/2018/03/post-164627.html )

自己の境界、認識しているものが曖昧になり、それによって問いただされる自分自身の意識。

さまざまな次元の向けられた意識のベクトルを私たちはどのように鑑賞するでしょうか。

そのベクトルを読み解くことで、新しい作品の見え方が生まれるのではないでしょうか。

作品としての完成度

哲学思想を表象した作品であると同時に、この作品は美術・音楽・プログラミングとしての完成度も大変高いです。

完成度の高い世界

動物・植物の3Dモデルも存在感がありイメージを強固にしています。

動物たちがバラバラになる演出もプログラミングを通して、とても自然な状態でメッシュが分解されています。

作品のストーリーが展開する部分にも高クオリティのエフェクトが使用され、世界観の深度を高めています。

 

エフェクト

そして、この作品の完成度を高めている大きな要素は音楽ではないでしょうか。

エクスペリメンタルなビートとアンビエンスが組み合わされた音楽は、幻想的な世界観を演出しています。

また、この作品のストーリーの展開に合わせて音楽も展開していくため、VRで体験する音楽作品としても楽しめます。

この音楽は、DJ/Producer/Painterとして活動する「食品まつり a.k.a Foodman」さんが制作しました。

 

食品まつり a.k.a Foodman

作品としてすべての要素にこだわりつくし、完成度を高めることによって没入感を深めています。

作品の哲学を読み解くと同時に、美術性も鑑賞していくことで、新しい見え方を発見出来るのではないでしょうか。

シーン

作品の哲学、美術としての完成度など、さまざまなポイントから作品を鑑賞していき、自分なりの作品解釈を見つけることで、この作品の楽しみ方を拡張することができます。

ぜひ体験してみましょう!

 

  • スマートフォンから体験する

    STYLY Mobileをダウンロードし、シーンを立ち上げましょう。ダウンロードの方法は以下の記事を参考にしましょう。

 

  • PC / VRからシーンを体験する

    以下の画像をクリックするとSTYLY GALLERYのシーンのページへアクセスします。機器を選択し、体験しましょう。

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