VRで伝承する古代の神「Neo Tengri」:Ardak Mukanova

この記事では、NEWVIEW AWARD 2021のファイナリストでGOLD賞を受賞されたカザフスタン出身Ardak MukanovaさんのVR作品「Neo Tengri」を紹介いたします。VR作品の鑑賞方法については、記事の最後に記載しております。

架空の自然が紡ぐ物語

「Neo Tengri」は「テングリ」を題材にしたVR作品です。

テングリとは、モンゴルを中心に中央アジア地域で広まった古代宗教の一種で、シャーマニズム信仰者の中で天神として崇められている神々のことを指します。また、天空を表す言葉としても使われおり、天空から人々を見守ると同時に、凶作や洪水などの罰も与える存在として崇敬されています。

紫がかった大地と大きな惑星、色味がかった霧が吹き抜け、手の届く距離でゆらゆらと浮かぶ玉たち。この自然は、とても壮大で幻想的な気持ちにさせてくれます。

その中心に置かれている「TAKE」と書かれた台座の上には、さんさんと光る何かがあります。

近づいて見てみると、木の枝のようなものが光っていました。早速手に取ってみましょう。

コントローラーのトリガーを引くと、枝の先から火のようなものが勢いよく噴射しました。なんだか力がみなぎってきます。

辺りを見回すと、平面のドローイングから飛び出てきたような、大きなクリーチャーがモゾモゾと踊っているのが見えます。手にはVRのコントローラのようなものを持っており、パッと見た印象ではあまり攻撃的には見えません。その手前にある「SHOOT」と書かれた玉に近づいてみましょう。

思い切ってコントローラーのトリガーを引きます。

玉が消えました!

クリーチャーは変わらず踊っています。

反対側を見てみると、新たなクリーチャーが現れています。早速近づいていきましょう。

伊勢海老のような、ザリガニのような、甲殻類を彷彿とさせる節足がひっきりなしに動いています。

その次に現れたのは、尻尾のような触覚のような、はたまたツノのような長い器官を持ち、それを振りかざすクリーチャー。

こちらは龍のような尻尾を持つクリーチャー。尻尾で玉を守りながら、黄色味がかった光を放っています。

色々なクリーチャーが出現し、気づいたら全く見たことのない景色の中に自分がいることに気づきます。ありえないほどの大きな惑星が浮かぶ空、見たことのない美しい岩肌、そして初めて出会うクリーチャーたち。
私は一体どこにいるのでしょうか。

全てのクリーチャーが出現すると「PRESS」と書かれた台座が現れました。台座の上のボタンを押します。

人の形をした何かが、苦しそうにうごめいています。起き上がろうとしては倒れ、を繰り返しながら舞踏家のようにモゾモゾと這っています。女性の笑い声と不穏な音楽が流れ、終わりを迎えます。

※プロジェクトには2番目の部分があるようですが、この作品はここで終わっています。

山の頂きに住み、空を表す古代の神

本人コメントより

私は岩面彫刻(petroglyph)と「テングリ信仰(tengrism)」と呼ばれる古代遊牧民の宗教、そして、それらの再解釈法に興味があります。テングリとは、山の頂きに住み、空を表す古代の神です。岩面彫刻の考古学的洞察、伝統的神話、自己流推測に基づき、私たちになじみのない環境を創作したいのです。ここは、巡回し、知らない手法と理解不能な言葉で未知のクリチャーたちと交流を試みることができる場所です。この場所にどんなクリチャーがいるかも分かりません。さまざまな解釈が可能です。

NEWVIEW公式サイトより引用)

アーティスト紹介

Ardak Mukanova

私は、グラフィック/モーションデザイナーで、物理とデジタルプロジェクトの両方に取り組んでいます。出身はカザフスタンです。特にアメリカでパーソンズ美術大学でMFA(美術学修士)に通いながら、商業クライアントの作品と個人的なクリエイティブプロジェクトを行っています。ロシアのサンクトペテルブルク大学でグラフィックデザイナーの学士号と修士号を修了しました。現在、人類が存在しない世界を想像できるスペキュレイティブワールドと別の現実に重点をおいています。デジタルのいろいろなメディアと物理的な付け合わせを寄せ集めたトランスメディア空間の創作を試みています。私のプロジェクトはBehance(https://www.behance.net/ardak_mukanova)で、そのプロセスは多くの場合、Instagram(https://www.instagram.com/ardakmukanova)で共有しています。

NEWVIEW公式サイトより引用)

信仰や神話の伝承

人々の信仰や民話は、これまでもさまざまな形で伝承されてきました。例えば、エジプトの壁画にはエジプトに伝わる神話や古代の神々など、当時の宗教や風習などをモチーフに描かれたものが今もなお保存されています。キリスト教義を描いた最後の晩餐は油絵具によってキャンバスに描かれ、奈良の大仏は巨大な彫刻として今でも寺院に祀られています。

また、オペラはギリシャ神話を土台に構成されていますが、そこには独自の解釈やアレンジが加えられることもしばしばあり、時代を反映した演出が施されることもあります。また、密教は口伝により伝承され何の跡形も残しません。

インタラクティブな伝承的信仰

この作品はテングリ信仰を再解釈し、独自の創作に基づいた環境をVRの世界に創り上げています。これは新たな信仰や伝説の伝承方法になり得るのではないでしょうか。このような土着信仰は、その名の通り特定の土地の地域共同体の中で堆積されながら根付き定着してきました。それが特定の土地を離れVRの世界で語り継がれる時、一体何が起きるでしょうか。インタラクティブな体験は伝承の方法に新たな可能性をもたらし、土地に根付いた信仰をそこから離れたところで語り継ぐことができることを容易にします。

さまざまな解釈のできる物語

考古学的洞察によって設計されたオブジェクトや自然、クリーチャー。これらが仮想に取り込まれて作られた自然の中で語られる信仰の物語は、未知の出会いを通して新たな解釈の可能性を私たちにもたらしてくれました。

土着から離れたところで語り継がれる信仰は、その形状を変えながらもバーチャル空間の中で根付いていくのかもしれません。

VRシーン体験方法

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VRシーン体験方法については、以下の記事をご参照ください。