この記事では、VRを始めるのに最適な「ゲーミングPC購入ガイド」を紹介します。
「ゲーミングPCは欲しいけど自作PCには興味がない」という人や「PCパーツを買い替えるのは面倒くさい」という人のために、なるべく安定して長く使い続けることを目標として、どの程度の予算でどんなPCを買えばいいかを解説します。
はじめに
STYLYを使っている人はVRに対して興味がある人も多いと思います。もしあなたがVRを始めたいのであれば、ゲーミングPCを使うべきです。
ゲーミングPCはゲーマー向けに作られていますが、通常のPCと比べてあらゆる作業の効率が改善します。ゲーミングPCがあればOfficeソフトや画像編集ソフト、3DCG制作ソフトで処理落ちに悩まされることはほとんどなくなります。時間と快適さを金で買うのであればゲーミングPCはうってつけです。クリエイター向けPCの安価なモデルはパーツがゲーミングPCと同じことも珍しくありません。
今回の記事ではCPUとGPUを重視してゲーミングPCを選んでいきます。
デスクトップとノートはどっちがいいのか?
筆者はゲーミングPCを買うにあたって初めに考えるべきことは、「デスクトップとノートPCのどちらを買うか決める」ことだと考えています。
一般論としてゲーミングノートPCは持ち運べるが壊れやすく、平均寿命が2~3年と短い傾向にあります。一方でデスクトップは重くて場所を取るけれど、寿命は4~5年を期待できます。
ただし、VRをするのにPCを動かしたり、外に持ち出してVRをするようなケースは考えにくいので、筆者としてはVRならデスクトップがオススメします。
一方で、日常的に外でクリエイティブな作業をする人や展示会への出展を考えている人であればノートPCの方がいいかもしれません。各々の用途に合わせて慎重に選びましょう。
【警告】VRはWindows以外のOSに非対応
クリエイティブ系の仕事をする人であればMacOSユーザも多いでしょう。
もちろんMacOS搭載の高級マシンだって十分に高性能ではありますが、VRヘッドセットが公式に対応しているのは基本的にWindowsだけです。
2020年2月時点でSteamでは3272本のVRソフトウェアが配信されていますが、Mac OSに対応しているのは12本(0.37%)、Linuxに対応しているのは7本(0.21%)のみです。LinuxやMacOSのマシンを買ってもVRの公式サポートは絶望的なので、VRを始めたい人は絶対にWindowsのPCを用意してください。
デスクトップ編:パーツの目安
ゲーミングPCはPC屋で注文すればほとんどのパーツを指定して買うことができるBTOが人気ですが、パーツが指定されたゲーミングPCも多少はカスタマイズ可能です。
今回はPCショップのドスパラを参考にPCの選び方を紹介します。また、ゲーミングPC選びで重要なCPUとGPU、メモリについて触れます。
デスクトップ編:CPUの事情
CPUはintel社とAMD社が作っており、2019年から2020年はAMDの調子がいいのでAMDのCPUの方が安い傾向にあります。
一部のクリエイティブ系のソフト(Adobeなど)ではAMDのCPUに最適化されていない問題があるものの、VRおよびゲームではCPUのメーカーにこだわらなくても大丈夫です。
2020年前半なら「AMD:Ryzen 7 3700X」もしくは「Intel:Core i7 9700K」が基本的な水準です。
デスクトップ編:GPUの事情
GPUはグラフィック性能のパーツであり、VRで一番重要なパーツはGPUです。
これからVR用のPCを選ぶ際に気を付けたいのは「VRS(Variable Rate Shading)」対応のGPUを搭載しているPCを選ぶことです。
VRSとは「ディスプレイの位置によってゲーム映像の解像度を変えることでGPUの負荷を下げる技術」のことで、今後のVRデバイスで活用される重要な機能となります(NVIDIA公式のVRS解説記事はこちら)。
2020年前半ではVRSが活用される機会が少ないものの、VRSに対応したGPUを所持していれば近いうちに低負荷で高品質なVRを楽しめるようになるでしょう。
現在VRSに対応しているGPUはNVIDIA社の「RTX 20XX(Turing)」シリーズのみで、AMD社は2020年末にリリースされるRDNA 2搭載GPU(名称は未発表)がVRSに対応予定です。
また、2020年前半で人気のVRゲーム(『Boneworks』や『Half-Life: Alyx』など)の推奨GPUは「RTX 2060 Super」以上となっています。そのため、2020年前半の段階ではGPUはRTX 2060 Super、もしくはそれ以上のモデルを選べば間違いありません。
デスクトップ編:推奨モデル
2020年のVRに適したデスクトップPCはドスパラを参考にすると「GALLERIA AXV ガレリア AXV」がオススメで、CPUがRyzen 7 3700X、GPUがRTX 2060 Super、RAMは16GBで税込171,578円です(※2020/04/02現在)。
ちなみに、デスクトップPCは筐体(PCケース)の大きい方が冷却機能が高くてPCが壊れにくいため、部屋のスペースに余裕があればPCケースの大きい方を選びましょう。
ちなみに、これぐらいのスペックであればPCゲームをプレイする際も十分に動く環境であり、4K解像度に拘らなければPS5/Xbox Sreiesなど2020年末に発売予定の次世代ゲーム機レベルのゲームソフトも十分にプレイできます。
ノート編:CPUの事情
ゲーミングノートPCのCPUについて、2020年前半ではIntelのCore i7-9750Hが主流です。
しかし、AMDのノートPC向けCPU「Ryzen 4000」シリーズを搭載したノートPCが2020年前半に発売予定なので、それが発売するとRyzen 7 4800Hがゲーミング向けとして普及する可能性があります。
ノート編:GPUの事情
ノートPCはデスクトップPCと同じ種類のGPUを使っていても、性能がやや低くなる傾向にあります。
デスクトップ編では推奨GPUをRTX 2060 Superとしましたが、ノートPCでRTX 2060 Superを搭載したモデルはほとんど見られないのでRTX 2070搭載モデルを選ぶと良いと思います。
また、AMD社は先述のようにVRSに対応したGPUがまだ発売されていないため、VR用途を想定したゲーミングノートPCでAMDのGPUを選ぶのはあまりオススメしません。
ノート編:推奨モデル
2020年のVRに適したノートPCはドスパラを参考にすると「GALLERIA GCR2070RGF ガレリア GCR2070RGF」がオススメで、CPUがCore i7-9750H、GPUがRTX 2070(8GB)、RAM16GBで税込186,978円(2020/04/02現在)となっています。
これくらいのスペックはVRを使わないゲーマーにも人気なので、在庫がないことも多いので販売サイトを確認しましょう。
余談ですが、一部の店舗ではゲーミングノートPCにVRヘッドセット(Vive Focus)が付属するセットが販売されています。しかし、マイナーな機種のVRヘッドセットを貰っても使い道に困る可能性が高いのであまりオススメしません。
デスクトップ・ノート共通:メモリ
VRとゲーム用途ならメモリは16GBあれば十分ですが、画像編集や動画編集、およびゲーム開発やVRコンテンツ開発をしたい場合は32GB用意しておくと楽になります。
デスクトップPCであればメモリを買い足してPCに取り付けることができますが、ノートPCの場合は交換する必要があったり、そもそも交換できない場合があるので注意してください。不安になったら注文の際に32GBへ増量しておきましょう。
VRではPCの端子に注意
ゲーミングPCを買うための購入ガイドには書かれていないことが多いですが、VRデバイスとPCを接続するケーブルの端子が重要になります。
端子とは、HDMIケーブルみたいに映像と音声を送るためのケーブルの挿し口のことで、VRのケーブルはHDMIではないので「PC購入後にVRのケーブルが刺さる端子がなかった」といったことが起こる可能性があります。
PCを買う際に、製品スペックの映像出力の欄でDisplay Port(mini Diplay Port)に対応していることを確認しておきましょう。
また、VRのほかにも4Kモニターの端子がDisplay Portの場合が多いので、4KモニターとVRを併用する場合はDisplay Port端子の数に気を付けるようにしましょう。メーカーによってはVR向けにDisplay Port端子がPCの前面についているモデルもあります。
オススメVRヘッドセット
VRヘッドセットは用途によって価格帯が異なり、手軽なものであれば5万円、高級志向だと10万円以上かかります。
2020年前半なら安い方がOculus、高い方がValveになります。残念なことに2020年前半はコロナウイルスの影響でどのVRデバイスも品薄気味なので、常に在庫をチェックしておくことが重要です。
なお、Oculusは日本ではOculus公式サイトもしくはAmazonからのみ注文可能となっています。くれぐれもAmazonの転売業者から不当に高い値段で買わないように注意してください。
Oculus Rift S
Oculus Rift S(公式サイト)は一番安定していて安いVRデバイスです。価格は税込49800円(2020/04/02現在)ですが、時期によっては数千円の値引きセールも行われます。
Oculus Questが品切れでもRift Sは残っていることがよくあります。Oculusは独占コンテンツも魅力的です。
端子はDisplay Portもしくはmini Display Portです。
Oculus Quest
Oculus Quest(公式サイト)は2020年前半で最も人気なVRデバイスです。
PCがなくても単体で動くのが何よりの魅力(というよりも、PCに接続する機能が後から追加された)ですが、PCに接続する端子がややこしく、公式推奨のUSB Type-C(税込10,200円)もしくは公式推奨の「Anker USB Type C ケーブル PowerLine USB-C & USB-A 3.0 ケーブル(ケーブルの長さは3m以上を推奨)」が必要です。
詳細を知りたい人はOculus公式ガイドを読んだり「Oculus Link」で検索して有志のブログを見てください。
また、PC(特にノートPC)によってはUSB Type-Cの映像出力に対応していないこともあるので製品特徴のカタログをよく見ておきましょう。
画質や映像のなめらかさはOculus Rift Sよりもやや劣りますが、携帯できるVRデバイスという魅力があります。
Oculus QuestでSTYLYを利用する手順はこちら
Valve Index
Valve Index(公式サイト)はSteamの運営であるValveが作る高級VRヘッドセットです。
VRデバイスでトップクラスの解像度とフレームレート(映像の滑らかさ)と両手のすべての指の動きを感知するコントローラが特徴ですが、そのかわりフルセットで13万円(2020/04/02現在)と高額です。
現在はValve Indexのコントローラに正式対応したタイトルが少ないものの、注目タイトルや人気タイトルは続々対応している状況です。
また、センサー(トラッカー)を買い足せば腕や腰にセンサーを付けるモーショントラッキング(VTuberのような人型のセンシング)ができる。今なら購入特典としてValveの新作VRゲーム「Half-Life: Alyx」がついてきます。
端子はDisplay Portで、PCショップなど店頭での購入や公式サイト(Degica)からの注文も可能です。
ValveでSTYLYを利用する手順はこちら
まとめ
必ずしもこの記事の解説通りにPCを選ぶ必要はありませんが、自作PCに興味がなかったり自分でパーツを交換するほどPCのメンテナンスに意欲的ではない人が「少なくとも4年以上は満足してVRを使える」スペックを想定してCPUとGPUの観点から解説しました。
おおよそPCの購入費としては15~20万円、VRデバイスの購入も最低で5万円は想定されるなど、PCでVRを始めるハードルとコストは依然として高い状況です。
そのため、各々の予算の都合に合わせてゲーミングPCを慎重に選ぶべきです。周りにPCに詳しい友人・知人がいればその人に頼って相談してください。