アシッドへと変容を遂げるモーショングラフィックス「20211127」:Zin Nagao

この記事ではデザイナーの「Zin Nagao」さんの作品「20211127」について紹介します。

NEWVIEW CYPHER 2021に参加し、自身が制作したモーショングラフィックスをSTYLYアセットとして活用し、空間作品へと変容を遂げています。

鑑賞ポイントを中心に考察します。

20211127

 

Zin Nagaoさんについて

Zin Nagao

佐賀県武雄市生まれ。福岡デザイン専門学校 高度総合デザイン科を卒業し、横浜にてデザイナーとして在住。 主に文字による新しい表現や可能性を追求し、実験と研究を行っている。

(NEWVIEW 公式サイトより引用 https://newview.design/cypher )

Instagram : https://www.instagram.com/zinnagao/

Typeface Designer At Fontworks Experiment “FOZNT” : https://www.foznt.com/

デザイン、モーショングラフィックスなどをベースに、さまざまな実験的な作品を制作しています。

今回はそのバックグラウンドをベースに、NEWVIEW CYPHERではVR作品を制作しました。

20211127について

シーンの構成はとてもシンプルです。一つの空間に、さまざまなモーショングラフィックスのオブジェクトが配置されています。

一見シンプルでありながら、とても異質な空間です。

それは、すべてのオブジェクトが動いている状態で、一つの画角をとっても情報量が過多のためです。

情報過多

Zinさんは過去に制作したモーショングラフィックスの映像データを、STYLY STUDIOの3Dアセットのテクスチャとしてアップロードし、空間に配置してVR作品を制作しています。

一つのデータとして鑑賞するモーショングラフィックスは、洗練されたデザイン作品であるが、VRとして空間に複数配置されコラージュされた空間は、異質な状態へと変容しています。

私はこの空間を観たとき、一つのゲームを思い出しました。それは「LSD」です。

『LSD』(エルエスディー)は、1998年10月22日に日本のアスミック・エース エンタテインメントから発売されたPlayStation用3Dアドベンチャーゲーム。

ゲームソフトという体裁を利用したドリームエミュレータとなっており、サイケデリックで支離滅裂な夢体験を楽しむためだけに作られ、ゲーム内の明確な目的は存在しない。全編に渡るサイケな色調は、LSDの名の通り、幻覚剤により呼び起こされる共感覚も彷彿とさせる。キャッチコピーは「こんなのゲームじゃない」。初回限定版には音源のみ収録されたボーナスCDが付属していた。

(Wikipedia : LSD(ゲーム)より引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/LSD_(%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0 )

PS1が発売され、さまざまな実験的な作品が制作されていたが、そのなかでもダントツで「奇妙なゲーム(通称:奇ゲー)」と称された作品です。

ゲームとして発売されながらも、明確なゴールがなく、サイケデリックな幻想的な空間を歩むだけの作品です。

Zinさんとの作品の共通点は、文字やグラフィックスによって描き出される幻想的な表象です。

LSDも同じように、シンプルなオブジェクトに文字やグラフィックスのテクスチャが貼られ、異質な空間となっています。

VR/ゲームといった3DCGの空間的な表現は2Dで表現される世界とは異なるイメージを構築します。

立体的にコラージュされた異質のイメージは、人間が通常認知する情報量を超えて、幻想的なイメージを生み出します。

LSDは幻覚剤の総称であり、別の呼び方で「アシッド」と呼ばれます。

Zinさんが作り上げたVRはアシッドな表現を意図せず、3DCGの空間にオブジェクトを配置して、情報量を増やした結果生まれた偶発的な「アシッド」のイメージです。

偶発的なアシッド

この作品のポイントは、その偶発性だと私は感じました。

デジタル上で作品を作るうえで、そのプラットフォームやソフトウェアの「機能」や「システム」をベースに、自分が所有しているリソースをどのように変容させるのかが、着目のポイントです。

このポイントによって、作品は「作者が意図しない状態」へと変容を遂げています。

VRのリテラシーがまだ普及せず、限られた機能とシステムを使うことで、意図しないものが生まれていく。VRの過渡期だからこその表現として、この作品はとても重要な表象になっていると解釈しました。

それを踏まえて鑑賞してみると、また新しい発見があるのではないでしょうか。

是非、自分なりの鑑賞ポイントも探しつつ、VR空間を体験してみましょう。

体験してみよう。

VRシーン体験方法(本作品はHMD/VR体験を推奨)

HMDデバイスをお持ちでPCからアクセスしてる方は、以下の「シーンを体験する」ボタンをクリックしてください(※初めての方は以下の説明もご参照ください)。

PC(Webブラウザ)から「シーンを体験する」ボタンをクリック後、シーンページのVRアイコンをクリックしてください。

スマートフォンからアクセスしてる方は、上記の「シーンを体験する」ボタンをクリックしてください。
*スマートフォンでは作者の意図した体験を再現できない場合があります。

クリック後、以下の画面が表示されます。
スマートフォン版STYLYをすでにダウンロードしている場合「Continue on Browser」を選択してください。

そして「Play on Mobile App」を選択するとシーンを体験できます。

Steam版STYLYをダウンロードする
https://store.steampowered.com/app/693990/STYLYVR_PLATFORM_FOR_ULTRA_EXPERIENCE/

Oculus Quest版STYLYをダウンロードする
https://www.oculus.com/experiences/quest/3982198145147898/

スマートフォン版STYLYをダウンロードする

 

 

シーン体験方法の詳細を知りたい方
VRシーン体験方法については、以下の記事をご参照ください。